文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

精子に隠された「不都合な真実」

妊娠・育児・性の悩み

「精子の実力」…濃度が高くて、元気ならいい? 淘汰されにくいY染色体の異常

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 体外受精や顕微授精などの生殖補助医療において、良好な精子の選別や品質管理は、みなさんが想像している以上に重要です。今回は、精液や精子に関する基礎的な知識をふまえながら、その理由を考えてみましょう。

「精液は蓄えられている」は誤解 実は射精時にできる

「精子の実力」…濃度が高くて、元気ならOK? 淘汰されにくいY染色体の異常

 思春期を迎えると、精巣の中で精子が造られ始めます。精子の元になる細胞は細胞分裂を繰り返し、倍々ゲームで最終的に4匹の精子になり、精巣の横にある精巣上体という場所に移動して成熟します。

 誤解している人が多いのですが、精液はあらかじめ精巣内に蓄えられているわけではありません。射精する時、精巣上体にある精子を含む分泌物(おそらく0.5ml程度)を、前立腺や、その後ろにある (せい)(のう) などからの分泌液が押し出し、それらが混ぜ合わさって精液ができるのです。

  (ちつ) 内に射精された精子のうち、元気な精子は30分以内に膣の奥の子宮腔内に進入します。射精後、膣内には数億匹の精子がいますが、子宮 (くう)(ない) に進入できる精子はごくわずか(想像ですが0.1%以下)です。

 さらに子宮の奥の卵管をさかのぼってゆく過程で、精子の数はどんどん減り、最終的に卵子に到達できるのは50匹程度といわれています(これも、実際に見た人はいませんが)。もし精液中に元気な精子が少なければ、卵子に到達する精子が全くいないということもあるでしょう。

 生殖補助医療は、限られた数の精子でも受精の可能性を高めようと、精子をできるだけ卵子の近くに届けることを目指してきました。その点、精子1匹を卵子に注入する顕微授精は最も合理的な方法です。ただし、生まれてくる子どもの健康のためには、卵子に自力でたどり着ける精子と同等な品質の精子が求められます。そこで、本来なら女性の体内で自然に行われる精子の選別を、人の手で代行する必要が出てくるのです。

検査のたびに変動する精子濃度

 不妊治療が始まると、女性側は多くの検査を受けますが、男性側は基本的には精液検査のみです。マスターベーションにより精液を出してもらい、1滴とって顕微鏡で精子濃度、運動率(運動している精子の割合)、精子頭部の形を観察します。

 精液検査のたび、「精子が減った」「増えた」と一喜一憂されている夫婦も多いと思います。精液中の精子濃度は0から数億匹/mlで、個人差が大きく、精液を採取するたび、精液量や精子濃度は大きく変動します。これは、マスターベーション時の興奮の度合いにより、精巣上体からの分泌物を押し出す精嚢、前立腺等の分泌液の量が増減するからです。精液がたくさん出るほど精子は薄まるので、実は精子濃度(1ml中の精子数)は「精子の実力」を評価するのにあまり良い指標ではありません。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

seishi-shinjitu

精子に隠された「不都合な真実」

兼子 智(かねこ・さとる)
東京理科大大学院、慶應大大学院修了。薬学博士、医学博士。東京歯科大市川総合病院産婦人科非常勤講師


黒田 優佳子(くろだ・ゆかこ)
慶應大医学部卒、同大学院修了。医学博士。「黒田インターナショナル メディカル リプロダクション」院長


萩生田 純(はぎゅうだ・じゅん)
慶應大医学部卒。博士(医学)。東京歯科大市川総合病院泌尿器科講師


中川 健(なかがわ・けん)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院副院長、泌尿器科部長、副リプロダクションセンター長


高松 潔(たかまつ・きよし)
慶應大医学部卒。医学博士。東京歯科大教授,同大市川総合病院産婦人科部長、リプロダクションセンター長

精子に隠された「不都合な真実」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

男のプライド?

友達の話

結婚して分かったのがほとんどの人が不妊治療しているという事。 そして半数以上の奥さんが旦那の協力がないと泣いています。当日に帰って来ないとか、病...

結婚して分かったのがほとんどの人が不妊治療しているという事。
そして半数以上の奥さんが旦那の協力がないと泣いています。当日に帰って来ないとか、病院について来ないとか、それなのに旦那側の親から女の方の問題とされ責められるそうです。
旦那が非協力的である場所が多い事や、男の人の年齢や精子に問題がある事をもっと公にして、親世代にも息子にも責任があると理解させないとダメなんじゃないでしょうか?
あんなにキリキリしてたら子供なんで出来ないと思うような精神状態のお友達が多かったです。実際、不妊治療やめ2人で生きていくと決めたお友達はストレスが無くなるのか子供ができる場合多く、女の人の精神状態も大きく影響してると思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事