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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

コラム

睡眠薬を飲むと認知症になりやすいって本当?

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。

 「睡眠薬でボケる!」

 そんな怖い記事が載っている雑誌が多数あります。服用している患者さんは心配でたまりません。でも、本当にすぐに服用をやめなくてはならないような怖いクスリなのでしょうか?

 いいえ、決してそのようなことはありません。今回ご紹介する内容をよく読んで、「それでも服用をやめたい」「別のクスリに代えたい」というときは、主治医と相談し、ゆっくりと取りかかっても遅くはありません。

「怖い薬シリーズ」のレギュラーメンバー

睡眠薬を飲むと認知症になりやすいって本当?

 最近はさまざまな雑誌で健康に関する特集が組まれることが多いですね。特集のテーマを私なりに大きく分けると、「運動や食事法など、健康や病気予防に役立つ情報」「病気の解説、その名医や有名病院の紹介」、そして「飲んではいけない薬(怖い薬)シリーズ」あたりでしょうか。

 睡眠薬は、「怖い薬シリーズ」のレギュラーメンバーとして毎回登場します。確かに、さまざまな意識調査でも、睡眠薬に関して不安を持っている人が非常に多いことが明らかになっています。「やめられなくなる」「量が増える」など、依存症に関する心配が最も多く、「翌日に眠気が残る」「仕事の能率が落ちる」などと生活機能への影響を気にしている方も少なくありません。

 「胎児への影響」を挙げる人がいるのは、過去に日本で大問題となったサリドマイド事件(妊娠中に服用した市販の睡眠薬サリドマイドの副作用で奇形や死産が生じた)の印象が強いためでしょう。現在の新薬審査では、催奇形性については厳密にチェックを受けています。そのほか、「精神病になる」「長期間服用していると寿命が縮まる」「寝酒の方が安心」など、誤解による不安も多く聞かれます。

悩ましい「睡眠薬でボケる」問題

  そんな睡眠薬ですから、雑誌側にとってもネタには事欠きません。特に、最近よく取り上げられるフレーズは、「睡眠薬でボケる」です。「睡眠薬を服用していると認知症になってしまう」というのです。これは本当なのでしょうか?

 私たち睡眠医学の専門家にとっても、最も悩ましいのが、この「睡眠薬でボケる」問題です。ナゼ悩ましいかと言えば、ウソではないがいまだ結論が出ていない、雑誌に書かれているように、すぐにでも服用をやめなくてはならないような危険があるわけでもない、しかし、患者さんにそれを説明しても、反応は人によってかなり違う……からです。つまり、理詰めでは簡単に納得してもらえず、患者さんの性格などを考慮しながらケース・バイ・ケースで対応する必要があります。

 認知症リスクが問題となる「睡眠薬」とは、前回のコラムで解説した脳内の「GABA‐A(ギャバ・エー)受容体に作用するタイプ」のものです。より最近になって発売された「メラトニン受容体に作用するタイプ」や「オレキシン受容体に作用するタイプ」の睡眠薬には、認知症の心配はありません。そのため、これから後の文章では、「睡眠薬」ではなく「GABA‐A受容体作動薬」という名前を用います。GABA‐A受容体作動薬の中には、睡眠薬のほか、抗不安薬(いわゆる安定剤)として用いられているものも多く、これから紹介する多くの研究では睡眠薬と抗不安薬を同じ薬剤として取り扱っています。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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