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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

紛争地の医療支援 人間の尊厳……「国境なき医師団」人道・外交担当代表に聞く

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UHCは遠くにあるが実現できる夢

インタビューに答えるレシュマ・アダティアさん(8月、横浜市で)

インタビューに答えるレシュマ・アダティアさん(8月、横浜市で)

 

  ――国連の掲げるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC=すべての人々が適切な予防、治療、リハビリ、緩和ケア等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態)の達成についてはどうお考えですか。

 UHCは、我々にとって、ずっと遠いところに存在している理想の夢というのが現状です。ただし、遠い夢ですが、実現できる夢だと思っています。そのためには、患者を一人の個人としてとらえる『患者中心の医療』が重要です。単にコミュニティーに存在しているだけでは不十分であり、コミュニティーと絆を持つということが大切だと考えています。

 国境なき医師団には、世界で約4万7000人のスタッフがいます。うち92%が現場で働くスタッフであり、84%が現地採用です。コミュニティーの文化的なコンセプトのなかで、人々がどんな形で医療を求めているのか、具体的な行動は患者さんに決めてもらうようにしています。人々に対して尊厳を提供すること、文化的な微妙な違いやニュアンスを理解することが大切です。

受益者負担を求める動きを懸念

  ――問題だと考えていることは?

 受益者負担という考え方が再度導入されようとしていることについて、問題視しています。私たちの調査では、受益者負担を導入すると、経済的なインセンティブが働き、ヘルスケアを受けなくなるという結果が出ています。無料のヘルスケアの提供がUHCの理想です。

  ――高価な薬の問題もある。

 国境なき医師団では、数多くの組織とも連携しながら、必要な人に必要な薬が届くためのキャンペーンをしてきました。重要なのは、受益者負担にしたからといって医薬品確保の解決にはつながらないということです。脆弱な人々にとっては負担のダブルパンチになってしまいます。

医師や看護師以外のスタッフも

  ――他組織との連携については?

 国際機関だけでなく、国レベルの組織とのコラボレーションもあり、非常に重要です。また、我々だけですべてできるわけではないし、やるというつもりもありません。だからこそ、現場では大きく協力をしなければなりません。たとえば、分析結果を共有するとか、お互い補完的に活動をするとか、様々なコラボがあります。

  ――国境なき医師団では、どんな人材を必要としていますか。

 医師や看護師だけでなく、事務や広報、ロジスティクス(物資調達や車両や施設、セキュリティの管理運営)担当など多くのスタッフを必要としています。医療関連以外のスタッフが一丸となって働くことが重要です。日本にも事務所があり、たくさんの支援をいただいています。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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