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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

紛争地の医療支援 人間の尊厳……「国境なき医師団」人道・外交担当代表に聞く

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緊急事態に対応 脆弱な人々を支援

 「国境なき医師団」は、医療・人道援助活動を行う民間の国際NGOで、紛争、貧困地域など世界70か国以上で活動している。1999年にはノーベル平和賞も受賞した。8月末に横浜市で開かれたアフリカ開発会議のために来日した、人道・外交担当代表のレシュマ・アダティアさんに話を聞いた。

  ――国境なき医師団の医療・人道援助活動とは?

 国境なき医師団は一義的に緊急事態に対応する組織です。紛争や政治的危機、社会的危機、そのほか何であれ、ヘルスケアの面で孤立しているぜいじゃくな人々が支援の対象ということになります。結核などの感染症や貧困地域などでの『顧みられない病気』を抱えている集団もそうです。

  ――紛争地などで活動するうえでの困難は?

 まず、危機にある患者の元にどうやってたどり着くかというアクセスの問題があります。紛争が起きて最初に影響を受けるのはヘルスケアですが、患者の元へ行くことができません。これはその国の政府当局にとっても同じです。もうひとつの問題は、紛争によって医療の仕組みそのものが崩れてしまうことです。インフラはかろうじて残っていても、もはや効率性が失われていることもあります。従来の医療制度が破壊されてしまうことが大きな問題です。

コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行に対応

コンゴ民主共和国イトゥリ州で国境なき医師団が支援している一時滞在センター(2019年6月)=国境なき医師団提供

コンゴ民主共和国イトゥリ州で国境なき医師団が支援している一時滞在センター(2019年6月)=国境なき医師団提供

同国北キブ州で地元住民にエボラ出血熱の症状を解説し、テストを受けることの重要性を説くスタッフ(2018年11月)=国境なき医師団提供

同国北キブ州で地元住民にエボラ出血熱の症状を解説し、検査を受けることの重要性を説くスタッフ(2018年11月)=国境なき医師団提供

  ――アフリカ・コンゴ民主共和国で2018年に発生したエボラ出血熱の流行は今年7月に世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を出すまでになっています。

 国境なき医師団はコンゴ民主共和国と1997年から長い間かかわりをもっており、同国の保健省とのパートナーシップも築きあげられています。国境なき医師団は北キブ州とイトゥリ州で計9つのプロジェクトを運営し、530人以上のスタッフが活動しています。また、745人の同国保健省職員に適切な給与が払われるよう、現地保健省を支援しています。 

 コンゴ民主共和国では紛争や感染症の流行、その他の要因が相まって、地域に緊張が生じています。だからこそ、コミュニティーとの信頼の醸成が重要で、それがあって初めてエボラの流行に対処できると思っています。

独立性、中立性、公平性を保つこと

  ――活動の原則とは?

 支援活動を行ううえで、独立性、中立性、公平性が非常に重要です。紛争地域において、どちらの側にもつかないことを重要視しています。人道的な組織として政治的な紛争に巻き込まれたくありません。国を変えるのはその国自身の責任であり、非常に難しい状況であっても政治からはきちんと距離を置くようにしています。それが人道組織として存在するうえでの基盤です。

 国境なき医師団の活動資金の95%は民間からの寄付です。2018年に国から活動資金をいただいたのは、日本とスイス、カナダからだけでした。ほとんどが個人からの寄付で成り立っており、独立性と公平性を保てるという特長があります。政治的信条や宗教などに関係なく、個人はすべて医療を受ける権利を持ち、それを担保しなければなりません。独立性は非常に重要だと考えています。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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