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医療・健康・介護のコラム

「妊活戦士」は孤独な闘い!? 休養も必要、一人で抱えないで

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ネット情報は玉石混交 言葉の行き違いでトラブルも

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 しかし、インターネットやSNSは、使い方によってはリスクの高いツールにもなってしまいます。例えば、今は妊活に関する情報は驚くほどたくさんありますが、玉石混交です。それを見分けることは時に難しく、それなりのリテラシーが必要になります。またちょっとした言葉の行き違いで、トラブルになってしまったり、いわゆるネットいじめにつながってしまったりということもあります。特に妊活・不妊関連では、ほんの小さなすれ違いが、時には大きなトラブルとなることもあり得ます。Nさんは、今そのことで悩んでいるそうです。

 実はNさんは、先日の治療でめでたく妊娠することができたのです。通院歴は長いものの、初めての体外受精で妊娠できたことはご本人も旦那様もビックリで、うれしいのはもちろんですが、「今までの長い間の苦労は一体何だったんだろう。もっと早く体外受精に進んでいればよかった! そしたら、こんなに長いこと悩まずに済んだのに」と思わずにはいられなかったそうです。

 そのNさんの一番の悩みとは、このことをSNSに書くべきかどうか、ということ。「毎日発信してきたので、そこそこフォロワーさんもいて、親しくなった人もいます。せっかくみんなで励まし合いながら頑張ってきたので、報告したい気持ちもあるんです。でも、みんなの気持ちを思うと、それはしない方がいいかなというのもわかっている。でも、だからって (うそ) をつくこともしたくないし……」。

 Nさんの気持ちは、よくわかります。当事者たちは「妊娠」という言葉にとても敏感です。「陽性反応」「 (たい)(のう) 」「妊娠反応」という単語だけでも、胸が苦しくなってしまうことがあります。特にそれが親しい人の発信だったりすると、なおさらです。「○○○ちゃん、妊娠できたんだ。よかったなー」とうれしく思う反面、「どうして私は妊娠できないんだろう」「こんなに頑張っているのに、なぜ私には赤ちゃんが来てくれないの?」と悲嘆に暮れるきっかけにもなってしまうのです。

 Nさんは、自分もそれを数多く経験しているので、他の人にはそんな思いはさせたくないと思っているのです。何日考えても答えが出ず、SNSには心配の声も上がっているといいます。Nさんの優しい気持ちが伝わってきて、私も切なくなってしまいました。

誰かに悩みを話すことで頭が整理され、楽になることも

 このような悩みを抱えているときには、一人で考え込まずに誰かに相談することをお勧めしています。不妊の悩みは多岐にわたり、複雑な心理状態になるため、一人では対応しきれないことが多いためです。相談とまでいかなくても、誰かに悩みを話してみるだけでも、自分の頭や心の中が整理されて、少し楽になったり、乗り越える方法が見えてきたりすることもあります。

 もしも「知っている人には話したくない」「相談できる人はいない」という場合は、専門のカウンセラー(生殖心理カウンセラー/不妊カウンセラー/不妊症看護認定看護師等)がいますし、最近ではオンラインや電話での相談ができるところも多数ありますので、ぜひ上手に活用いただけるといいと思います。

10月6日「Fine祭り2019」 不妊体験談発表など

 私が代表を務めるNPO法人Fineにも、不妊を体験したピア・カウンセラーがいて、電話や面談のカウンセリングを行っています。また10月6日(日)には、年に1度の「 Fine祭り2019 」という妊活当事者のイベントが東京で開催されます。男女7名の妊活・不妊体験談発表、当事者だけでのおしゃべり会、不妊スペシャリスト(不妊症看護認定看護師/臨床エンブリオロジスト)への無料相談(当日先着順:30名まで)、妊活ヨガなどもありますので、よろしければお越しになり、心の荷物を少し軽くでもしていただけたら、とてもうれしいです。

 不妊治療体験談は、当事者ではない方でもお聞きいただけますし、遠方の方にはネット中継もあります(Fine正会員・賛助会員など要件あり。先着順。定員になり次第締め切り)。自分以外の体験談を直接、生の声で聞くことも、自分の悩みの整理にもつながりますので、とてもおすすめです。

 妊活・不妊当事者に限りませんが、日本人は心の痛みに少し鈍感です。もっと自分をいたわってあげてほしいなと思います。妊活戦士のみなさんだって、たまには休養も必要。心に栄養をたっぷりあげてください。それでこそ、また進んでいけると思いますので。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)

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いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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