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医療・健康・介護のコラム

「妊活戦士」は孤独な闘い!? 休養も必要、一人で抱えないで

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 「妊活戦士」という言葉をご存知でしょうか。

 私は少し前にツイッターのハッシュタグで知ったのですが、その時、言葉の強さに少しドキッとしたと同時に、「ああ、確かにそうなのかも。私もそうだったかも……」と、妙に納得してしまいました。

「妊活戦士」は孤独な闘い!? 休養も必要、一人で抱えないで

 「戦士」というからには、戦っているわけです。では何と? NPO法人Fineは設立当初より、妊活・不妊治療の負担は大きく四つに分類されると提唱しています。四つとは、「身体的負担」「金銭的負担」「時間的負担」そして「精神的負担」です。当事者はそれぞれの負担に対して、様々な場面でピンと張りつめて闘っています。

 妊活や不妊治療には様々な不安がつきものです。「自分は本当に妊娠できるのか」「妊娠できたとしても、無事に出産できるのか」「できなかったらどうしよう。確率はどれぐらいなんだろう」といった不安に始まり、経済的な不安も大きいです。

 「次の治療費はいくらかかるんだろう」「どうやって治療費を工面しよう?」。あるいは「貯金はいつまでもつだろう。貯蓄を切り崩していたら、いざ出産した時には子育てのお金がないんじゃないだろうか。治療のためには二人とも仕事を続けなくちゃいけない」。

 そうなると今度は、仕事と治療の両立についての不安が生じます。「次の周期には、遅刻や早退の理由を、どう言えばいいんだろう」「職場に迷惑を掛けたらどうしよう。このまま続けていけるだろうか」「思い切ってカミングアウトした方がいいのかな。でもそうしたら、上司や同僚、部下は何と思うだろう」などなど。

自称「妊活戦士」 夫にも内緒のSNSで仲間と思い共有

 自称「妊活戦士」のNさんは33歳。IT会社でチームリーダーを務めています。20代のころから不妊治療を行い、通院歴は4年ほどです。夫婦ともに、これといって大きな原因もなく、最初の2年はタイミング法のみ。しかし、妊娠しなかったため、人工授精にステップアップして1年ほど続けましたが、やはり妊娠しません。そこで体外受精ができる病院に転院することになり、先日初めての体外受精を受けたそうです。

 Nさんは、自分の両親以外には治療のことは話しておらず、特に会社では男性が多いこともあり、絶対に言いたくないといいます。そんなNさんが、治療の相談や不妊の悩みを唯一、吐き出せる場所はSNSです。インスタグラムとツイッターに、実名とは別に「妊活専門アカウント」を匿名で持っていて、そこに毎日の妊活のつらい気持ちを書くことで、治療の不安やストレスを発散しているそうです。

 そのアカウントは、友人たちにはもちろん、夫にも内緒で持っているため、たとえば夫に対する愚痴なども、遠慮なく自由に本音が書けるところがいいとのこと。また、その妊活アカウントを通じて知り合いになった同じ「妊活戦士」の友人たちと、気持ちを共有し、励まし合いながら治療を頑張れることもモチベーションにつながっているといいます。

 実は私たちNPO法人Fineのメンバーも、インターネットで知り合った人がほとんどです。ネットは距離や時間の壁をたやすく越えることができるため、こうした交流を生みだすには非常に便利な、うってつけのツールです。

 私も、自分の不妊治療に関する悩みを初めてインターネットに書き込んだ時、会ったこともない人たちから共感してもらえたり、優しい言葉をかけてもらえたりした時には、涙が出るほどうれしかったです。そこから、いまだに関係が続く友人ができたりもしました。こうした出会いは一生ものになることもあり、とても貴重だなと思います。

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松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

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