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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

コラム

運動会シーズンでよくある踵の痛み

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 夏の暑さが落ち着き、スポーツに最適な季節がやってきました。最近は春に運動会を行う学校も増えているようですが、「運動会は秋」という学校はまだ多いと思います。普段、それほどスポーツに触れ合う機会のない子どもにとっては、 身体(からだ) を動かすにはよい機会ですが、時に過度な負担のため身体に痛みがでることもあります。今回は運動会シーズンによくある話です。

 小学6年生のWさんが普段運動をするのは体育の授業ぐらいです。運動会シーズンになり、短距離走や棒取りゲーム、またダンスの練習も増えています。ある時、 (かかと) の痛みを自覚し、徐々にそれがひどくなってきました。3週間後に運動会を控えており、親も心配しています。

 成長期のスポーツ選手に、踵の痛みはよくみられる症状です。 下腿(かたい) 三頭筋から続くアキレス (けん) は踵の骨につながり、足関節を底屈させる働きがあります。つまり、踵を浮かせるように働くため、歩行や走る動作で重要な役割をします。

 アキレス腱がつく踵の部分は、成長期ではまだ骨になりきっていない軟骨のため、あまり強くありません。踵を浮かせる動作が繰り返される時、アキレス腱の付く踵の骨には負担がかかります。この負担が過剰になると痛みを生じます。シーバー病という名称も付いており、膝で同様のことが起きた場合は、オスグッド病と呼ばれます(https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170824-OYTEW224437/)。

いわゆるぺたぺた走るタイプでは踵に負担がかかりやすい

 同じ練習をしているのに、自分の子だけ痛くなるのはなぜか、と質問される保護者の方がいます。

 運動量が多いことは間違いなく痛みの発生に影響しますが、走り方の違い、さらにその前の段階として足の形、足全体や足の指の使い方、体重のかかるバランスの違いなどで、同じ練習量でも痛みが出る選手と出ない選手がいます。良い走り方の選手は、前足部で接地して、足の指の筋力で駆けることができます。一方、後足部で接地するとぺたぺた走っているような走り方となり、足の指の筋力より、足関節の底屈動作で駆けることになります。足関節での底屈動作はアキレス腱を介して行われるため、その付着部である踵にかかる負担が大きくなります。

 痛みを軽減させるには、一定期間の運動量調整が必要になります。さらに、足の指の使い方や走り方を改善することで、痛みが再発したり、ひどくなったりすることを予防することが大切です。リハビリの例として、タオルギャザー、足の指のストレッチ、カーフレイズなどが挙げられます。

 それではWさんの経過です。

 1週間は完全に練習を休み、痛みの程度が少し軽くなりました。この間、理学療法士が指導したリハビリメニューを毎日行いました。また、下腿三頭筋をよくほぐしてストレッチも行いました。痛みはまだありましたが、1週間後から練習に参加し、完全に痛みがなくなったわけではありませんでしたが、運動会当日は、短距離走、棒拾い、ダンスなどすべての競技に参加することができました。

  裸足(はだし) のまま、園庭で遊ばせる幼稚園などがあります。小さい頃から足の指で地面を捉える運動をしておくことで、足の指を上手に使えるようになるかもしれません。今回のような踵の痛みで、成長にまで影響を及ぼすケースはほとんどありませんが、痛みなどを気にすることなくスポーツを楽しむためにも、普段から足の指を意識して使っておきたいですね。(大関信武 整形外科医)

【スポーツ医学検定のご案内】

 スポーツに関わる人に正しい知識を広め、不意のけがや故障を減らすことを目的とした「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手だけでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。

 2019年12月8日に開催する第6回スポーツ医学検定の申し込みはホームページで開始しています。

 本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。

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Ozeki-7-pro

大関信武(おおぜき のぶたけ)

整形外科医・博士(医学)
一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。
2002年滋賀医科大学を卒業。2014年横浜市立大学大学院修了。横浜市立大学付属病院、横浜南共済病院、関東学院大学ラグビー部チームドクター、英国アバディーン大学研究員などを経て、2015年より東京医科歯科大学再生医療研究センター所属。現在、東京医科歯科大学付属病院スポーツ医学診療センター、八王子スポーツ整形外科などで診療。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。野球、空手、ラグビーなどを通じて、アキレス腱断裂、野球肘、肩関節脱臼、足関節靱帯損傷、骨折(鼻骨、手首、下腿)など自身が豊富なケガの経験を持つ。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、2015年12月一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「 スポーツ医学検定 」を開催している。

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1件 のコメント

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伝える事と伝わることと続ける事 全医体

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

西医体と東医体の上位校による全医体は準優勝に終わりました。 決勝は見れなかったのですが、準決勝における優勝校の質と層の厚さはこちらを破ってしかる...

西医体と東医体の上位校による全医体は準優勝に終わりました。
決勝は見れなかったのですが、準決勝における優勝校の質と層の厚さはこちらを破ってしかるべきものでした。
一方で、卒業などによる欠員と長距離移動の不利があったとはいえ、展開がハマれば勝てる実力がついていただけに残念です。
ですが、勝ちに不思議の勝ちあり負けに不思議の負けなし、を部員がかみしめてくれれば、少しうまくいきすぎた今シーズンが来シーズンの慢心にならないでいいのかもしれません。

関係なさそうで、ランニングとかのフォーム矯正や指導も一緒ですよね。
もともとの遺伝素因や生活様式、運動習慣があって、その時点での筋力や骨格、運動動作のフォームなどがあります。
無理な姿勢や合わない靴は必ず体に跳ね返ります。
段階を追って修正し、成長するのは特に人間的な問題が大きいです。

昨今、靴ひもを結べない若者が増えていて、実際、昔はその事に悩みましたが、今は最初に軽く説明したあと、痛みによって本人がそう思うまで放置することにしています。
(企業さんも靴ひもなしでフィットする靴もいいですが、しっかり靴ひもを結ぶ選手を広告に起用してほしいです。)

改めて、伝える事、伝わる事、それを継続できるか否かは様々な問題でなかなか難しいです。
失敗や怪我は嬉しい事ではないですが、多くの人間はむしろそちらから学ぶ現実と向き合わないといけません。
出来たら、大怪我をする前に。

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