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しあわせの歯科医療

医療・健康・介護のコラム

この歯は本当に、抜かなければいけないのか

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重度の歯も残せるが、濃厚な専門治療が必要

 【写真1、2】の歯は、患者が残したいという意向が強く、武田さんは歯周組織の再生治療を行って、結果として10年余り後の現在も残っています。その治療の内容を聞くと、歯周組織の再生治療もなかなか大変なことがわかります。

 歯周病と診断されたら、まず、基本治療が行われます。歯科衛生士が歯磨きを指導し、歯茎の内部にこびりついた歯石をきれいにクリーニングします。2~3週間経過を見て、基本治療による歯茎の変化を確かめます。「同じ重症度の人でも、基本治療で歯茎が締まってくる人もいれば、なかなか改善しない人もいます。この経過のよしあしが、再生治療の見通しの参考になります」と武田さんは指摘します。

再生治療には保険と自費がある

 歯周組織の再生には、歯の根から歯石を徹底的に取り除く手順が不可欠です。重症の場合、根の奥にまで歯石がこびりついているので、歯茎を切り開いて、根の先まで露出させて、歯石を除去し、細菌が感染した歯肉も取り除きます。その上で、歯周組織を再生させる薬剤などを塗布して歯茎を閉じます。

 歯茎を開いて処置をした歯は根がゆるんでしまうので、歯が揺れるのを抑えるため、隣接する歯と併せたかぶせ物を接着するといった方法で固定します。歯周組織の再生治療に使う材料は主に2種類。歯周組織再生剤のリグロスは保険適用されていますが、再生誘導材料のエムドゲインは保険では使えません。状態によって使い分けるようです。

 再生治療の後で、歯肉の移植手術をする場合もあります。【写真1】の方のように歯茎が下がって、歯が長く見えている場合、口の中から組織を取って歯肉に移植すれば歯茎を回復することができます。【写真4】は治療後です。歯肉の回復は歯周組織を保護する機能上のメリットもあります。歯肉移植も保険適用外なので、満足のいく再生治療は自費にならざるを得ない場合が出てきます。

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【写真4】再生治療と歯肉移植後

 ここまでの治療となると、歯科医ならだれでもできるわけではなく、歯周病の治療に習熟していないと難しいようです。自費治療なので相応の費用もかかります。

奥歯が揺れたら、歯槽骨の吸収が相当に進んでいる

 歯周病の専門医の二階堂雅彦さん(二階堂歯科医院、東京・日本橋)の診療所にもしばしば「再生治療ができませんか」と言って、患者が訪れるそうです。「歯が揺れるようになってから受診される方が多いのですが、残念ながらその状態では多くの方は手遅れです。自覚症状がなく、かめているのに、エックス線検査では歯槽骨が溶けているという状態だと、再生できる可能性が高いのですが」と話しています。

 前歯と奥歯では症状の表れ方に少し違いがあります。強い力がかかる奥歯は、根が複数に分かれてがっちりと歯茎に着いています。その奥歯が揺れ始めた時には相当に歯槽骨の吸収が進んでしまっているので、歯を残すのはなかなか難しいそうです。一方、前歯は1本の根で支えられているため、早い段階で揺れに気づき、すぐに治療をすれば歯を残せる可能性もあると言います。

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★【完成版】しあわせの歯科医療2 300-300

渡辺勝敏(わたなべ・かつとし)
メディア局編集部記者。1985年入社。 秋田支局、金沢支局、社会部を経て97年から医療を担当。2004年に病院ごとの治療件数を一覧にした「病院の実力」、2009年に医療健康サイト「ヨミドクター」を立ち上げた。立命館大学客員教授。

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