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肺がん 薬物療法…複数遺伝子 一気に検査

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 日本人のがんでは、最も死者が多い肺がん。引き金となる細胞の遺伝子異常が解明され、対応する薬の実用化が進んでいる。複数の遺伝子の状態を同時に調べる医療機器がこの夏登場し、遺伝子異常に応じた適切な治療薬を効率的に見つけることが可能となった。(米山粛彦)

 肺がんは、小細胞がん、腺がん、 扁平へんぺい 上皮がん、大細胞がんの4タイプあり、これらのタイプや進行の程度などに応じて手術や放射線、薬物療法を使い分ける。複数の治療法を組み合わせることもある。初期に目立った症状がなく、手術が難しい状態で見つかる患者も少なくない。転移・再発がんは薬物療法が中心で、従来の抗がん剤や、分子標的薬、免疫治療薬がある。

肺がん 薬物療法…複数遺伝子 一気に検査

 ドライバー遺伝子

 薬物療法で注目されているのが、「ドライバー遺伝子」の異常だ。この遺伝子は細胞の増殖に関わり、本来はアクセルとブレーキのバランスが保たれている。だが、何らかの影響で遺伝子が傷つくと、細胞の表面や内部に異常なたんぱく質が作られる。これが、増殖のきっかけとなる物質と結合することで細胞は増え続け、がん化する。

 近畿大腫瘍内科教授の中川和彦さんによると、肺がんに関わるドライバー遺伝子の異常は2000年以降、相次いで見つかった。肺がんのタイプで最も患者数が多い腺がんの7割に、こうした突然変異などの遺伝子異常が関係していることが分かっている。

 分子標的薬は主に、異常なたんぱく質の働きを抑える。がんを引き起こすドライバー遺伝子の異常は患者により異なる。適切な薬を選ぶには原因となる遺伝子を特定することが重要だ。検査に必要な肺がん組織は、喉から肺に通す気管支鏡などを使って採取し分析される。これまでは異常が疑われる遺伝子を一つずつ調べなければならず、複数の遺伝子を対象にすると、数か月を要する場合もあった。

 2週間で結果判明

 今年6月に発売された医療機器は、複数の遺伝子を同時に読み取り、約2週間で結果が分かる。分析に必要ながん組織の量は、3分の1以下で済む。検査対象は現在、治療薬がある四つの遺伝子異常にとどまる。今後、新しい薬が実用化されれば、対象を増やすことができるという。

 大阪府の60歳代の男性は7月、地元の診療所を受診し、脳に腫瘍が見つかった。紹介された近大病院で手術し、肺がんの脳転移と分かった。最初にできた肺がんは薬物治療をすることになった。8月下旬の検査で遺伝子の異常がないタイプと分かり、抗がん剤や免疫治療薬を使う予定だ。男性は「自分に合う薬が見つかり、今後の治療の効果に期待している」と語る。

 分子標的薬の効果は数年持続する場合もあるが、がん細胞に別の遺伝子変異が起こると効きにくくなる。近年は、新たな変異に対応した新薬が登場している。

 従来の抗がん剤を含めた複数の薬の組み合わせや、薬を使う順番など、治療効果を高めるための研究も進んでいる。がん研有明病院呼吸器内科部長の西尾誠人さんは「薬が効きにくくなる仕組みも解明されており、パターンに応じて患者に使う薬の選択肢が広がってきた」と話している。

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