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[災害と子ども]心の回復には遊びが必要 平気そうな子ほどケアを
「先生は、子どもたちと遊んでますか? 少しでも時間があれば、診察室から出て遊んでやってくださいよ。今、彼らに必要なのは、そういうことなんですよ」
2011年3月に東日本大震災が起きて2週間ほど 経 った頃、私はNGOの緊急医療支援チームの一員として、2週間近く、岩手県大槌町で活動しました。避難所となっていた高校の給湯室の一角を借りて急ごしらえの小児科診察室を作り、体調を崩したお子さんを診察しました。そんなある日、一緒に診察室を管理していた男性看護師からかけられたのが、この一言でした。
避難所で求められていたのは「日常」でした。幼児は遊ぶ場を、小学生や中学生は学校の再開を、大人は仕事の再開を望んでいました。非日常の避難所生活の中で、少しでも以前の「日常」を取り戻すこと。それは診療も同じでした。
災害時にすべきことは、普段の生活に少しでも近づけること。特別な診療ではありませんでした。そんなことに気づかされながら、診療をしたり、保育園の巡回をしたりして過ごしました。
大事なのは「普段に近づける」こと
9月は防災月間です。毎年この時期になると、防災グッズや災害時の豆知識など、色々な情報が連日、報道されます。私は地方の病院で働く小児科医に過ぎず、ましてや災害医療の専門家ではありません。私が伝えられる特別なことなんて、何もないんじゃないか……そう思っていました。
そんなとき、ふと唐突に、冒頭の彼の言葉を思い出したのです。災害時に求められていたのは「特別なこと」じゃなかったよな、と。
前置きが長くなりましたが、今回は防災について書こうと思います。でも特別なやり方、裏技的な話、専門的な知識をお話しするわけではありません。ただ、「普段に近づける」という視点で、災害時の子どもの医療についてお伝えしたいと思います。
流行するのは「珍しい病気」ではない
災害時に特に流行しやすい病気はどんなものか、ご存じでしょうか。
直後にまず増えるのは、ケガなどから起きる感染症です。1週間ほどすると、汚染された食物や水を介した感染症が増えてきます。ノロウイルスや細菌などによる感染性胃腸炎などです。
次に、避難所など人が密集した環境で、呼吸器感染症が増えてきます。上気道炎や気管支炎、インフルエンザなどです。 麻疹 の流行が起きることもあります。いずれにしても、決して珍しい病気が流行するわけではなく、「 日頃からよく見られる感染症が多い 」ということがおわかりいただけると思います。
これらの感染症を予防するには、アルコールによる手指の消毒や流水、石けんによる手洗いが大切です。水が十分になければ、ウェットティッシュで代用することになります。ちなみに赤ちゃんのおしり拭きは「万能グッズ」で、色々なことに使えて重宝します。汚物処理には、普段はビニール袋や使い捨ての手袋をよく使うと思いますが、災害時は入手が難しくなることがありますので、あらかじめ多めに備蓄しておくことをお勧めします。
避難所はパーティションで区分けすることが多いのですが、これは感染予防策としても有効です。それでも、麻疹などの空気感染症は、いったん発生すると、平常時でも感染を封じ込めるのは非常に難しいものです。栄養状態や衛生状態がより悪化する避難所では、なおさらです。
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