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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

妊娠・育児・性の悩み

[災害と子ども]心の回復には遊びが必要 平気そうな子ほどケアを

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平時の予防接種が災害対策

 そんな被災地で流行を封じ込めるための切り札は何でしょうか。

 それは特別なことではありません。予防接種です。ワクチンの接種率を上げておくと、いざというときに避難所での爆発的な感染症の流行を未然に防ぐことができます。「 平時のワクチン接種は、災害時の対策にもなる 」ということを強調しておきたいと思います。

災害時に特に流行しやすく、事前にワクチン接種歴を確認しておきたい病気
災害時に特に流行しやすく、事前にワクチン接種歴を確認しておきたい病気

子育てを助けてもらうのはわがままじゃない

 災害時には、お母さんの心身にも大きな負担がかかります。母乳をあげているお母さんは、母乳が出にくくなったと感じるかもしれません。

 ただ、それは一時的なものです。まずは安心し、リラックスできる空間を作ること。赤ちゃんが欲しがるたびに飲ませていると、母乳はまた作られ、出やすくなります。パーティションやテントなどを活用して、避難所に授乳スペースを作り、「 少しでも普段の様子に近づけることが、母乳栄養を続けるうえで大切 」とされています。

 一方、ミルクをあげているお母さんは、粉ミルクと哺乳瓶両方の殺菌が必要になります。

 粉ミルクは70℃以上のお湯で殺菌する必要がありますが、19年3月からは、日本でも液体ミルクの販売が開始されました。これは、粉ミルクと同じ組成ですが、調乳の手間がかからず、お湯による殺菌も不要で、常温保存が可能。そうした点から、災害時には特に有用です。

 哺乳瓶の殺菌が難しい場合には、紙コップを用いたカップ授乳という方法があります。

 授乳に限らず、強調しておきたいことがあります。それは、「 災害時でも、いつも通りの子育てができるよう、周りの人に手伝ってもらうことは、決してわがままではない 」ということです。赤ちゃんのためにも、お母さんは自分を大切にしてくださいね。

子どもは遊びを通じて回復する

 災害時には、お子さんの赤ちゃん返りや夜泣き、乱暴な行動などが目に付くかもしれません。同じ話を何度も繰り返したり、災害を再現する「地震ごっこ」「津波ごっこ」の遊びをすることもあります。これは、子どもが子どもなりに災害を受け止め、体験を消化するために必要なプロセスと言われています。「異常な行動」ではなく、「非常時における正常な行動」です。大人が時間を作って一緒に遊び、話をして、抱きしめてあげてください。子どもも親に気を使っています。平気そうに見える子どもほど、ケアが必要です。

 子どもの心のケアのために、災害時には、子どもたちが安心して安全に過ごすことのできる場所、いわゆる「子どもにやさしい空間」が必要とされています。詳しくはユニセフなど制作の「子どもにやさしい空間ガイドブック」をご参照ください。

 子どもは仲間と遊ぶ中で、災害によるマイナスの影響を最小限にとどめ、情緒を安定させ、回復し、日常を取り戻していくことができます。過酷な状況下で、大人が子どもに関わる際に大切なのは、「 どうやったら遊びを続けさせられるかを考えること 」です。内閣府の避難所運営ガイドラインにも「キッズスペース(子供の遊び場)の設置を検討する」と記載されています。

 冒頭の会話に戻りましょう。

 8年前、避難所の給湯室で、「先生、子どもと遊んでる?」と私に問いかけた男性看護師・細本龍男さんは、「災害時こそ子どもには日常の遊びが大切」ということをいち早く見抜いていました。率先してプレイルームを作り、「子どもにやさしい空間」を確保して、子どもたちを笑顔にしていった彼の姿に、私も励まされました。彼は、その後もずっと大槌と関わり続けています。

 台風15号や九州北部の豪雨の影響で、多くの方が困難に直面しています。少しでも日常が回復されることを祈りつつ、私自身にできることを探していきたいと思っています。(坂本昌彦 小児科医)

作成協力:アウトドア防災ガイド あんどうりす

参考文献:
  1. 被災地の避難所等で生活をする赤ちゃんのためのQ&A 日本新生児成育医学会災害対策委員会版
  2. 日本ラクテーション・コンサルタント協会 災害時の乳幼児栄養・母乳育児支援情報 (2019年9月2日参照)
  3. 日本栄養士会. 避難生活で母子に生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について
  4. 田中総一郎:災害と子どもたち,Neonatal Care 25:510-513,2012
  5. 徳田浩一,賀来満夫:災害時における感染症の予防,小児科臨床,vol.67(4).735-740,2014

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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1件 のコメント

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平気そうなふりの仮面は大人にもストレス

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

なにも子供に限った話じゃなくて、大人も大人の仮面を外す時間は必要ですよね。 過酷な労働環境で事件が多いのは心身に折り重なったストレスの影響も大き...

なにも子供に限った話じゃなくて、大人も大人の仮面を外す時間は必要ですよね。
過酷な労働環境で事件が多いのは心身に折り重なったストレスの影響も大きいのではないかと思います。

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