心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」
医療・健康・介護のコラム
依存、DV、離婚…「呪われた一族なんです!」と訴えた48歳シングルマザー 家系図が語った「本当のこと」
「先生、とんでもないことがわかったんです!」
外来を訪れたW美さんは、興奮した口調でそう話し始めた。
「私の家系は、『呪われた一族』だったんです!」
W美さんは48歳の女性。診断は「抑うつ状態」。離婚後、1人で3人の子どもを育ててきた。やっと子どもたちも独立したので、あらためて勉強しようと思い、メンタル系のセミナーに参加し始めたはず。
「セミナーで何か大発見でもあったの?」と尋ねると、「『ジェノグラム』が教えてくれたんですよ!」と、彼女は答えた。

イラスト:奥山裕美
家族・親族の関係を書き込む「ジェノグラム」
「ジェノグラム」とは、平たく言えば「家系図」である。普通の家系図と違うのは、その中にメンバー同士の感情や行動パターンの関係を書き込んでゆくこと。例えば、母と兄の仲が良くて親しい関係なら、2人を「=」で結び、両親の仲が悪くてしょっちゅう喧嘩 をしているなら「波線」で結ぶ。離婚は「//」で切断し、疎遠なら「……」でつなぐなどのルールがある。
そのようにして、祖父母まで3世代くらいの「家系図」を作って全体を見渡す。家族・親族の問題点を洗い出して、対策を考えるのが目的のワークだ。
もともと熱中しやすいW美さんのこと。やり方を教わって、ジェノグラムを描き始めると夢中になり、一族の問題点を確認する作業にのめり込んだ。遠い親戚のことは、よくわからないところも多いため、家系図を持ち帰って、親族に尋ねながら、失われたピースを埋めていった。
こうして完成した「家系図」の全体を眺めたとき、彼女はあらためてショックを受けた。
「うちの一族って呪われてるよね!」
そう思ったのだ。
「不幸ばかりで救われない」と言っていた母
W美さんの母親は、2度結婚し、2度離婚している。前夫は酒を飲んで暴力を振るう人だった。2人目の夫は、ギャンブル依存で女癖が悪かった。
母の母、つまり祖母は、未婚の母としてW美さんの母親を産み、その後、別の男性と結婚した。その男性との間に子どもが生まれると、W美さんの母親は、祖母の姉に引き取られ、伯母夫婦を「父母」と呼んで育った。事情を知ったのは、成人してからだ。
母親は、「自分の人生は『不幸』ばかりで救われない」といつも言っていた。神経質で口うるさく、W美さんは母親を好きにはなれなかった。
このあたりで「家系図」が込み入っているのは、もとよりわかっていたのだが、範囲を広げて眺めると、さながら迷路図のようだった。
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