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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと 塩谷信幸

医療・健康・介護のコラム

老人こそソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を!

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老人こそソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を!

 「老人は新しいことを覚えられない」とよく言われます。昔からの習慣にこだわって、新しいものに手を出さない。僕に言わせればそんなことはありません。老人でも新しいことは覚えられます。ただし時間がかかるのと、反復練習が必要です。

 また、プライドが邪魔をするので、若い者に教えてもらわなければいけないと思うと、意欲を失ってしまいがちです。

 僕は十数年前からブログを立ち上げ、1日も欠かさないで更新してきました。10年ほど前にフェイスブック(FB)も始めて今に至っています。もともと新しいものには手がすぐに伸びる方で、初期のアップルのコンピューターと格闘して使ったこともありました。

最初はパソコンの手ほどきから

 ですが、技術は進歩して、SNSを始めるとなると、当初は改めて、パソコンやインターネットの使い方の手ほどきを受けました。こんな時、身内は厳しい。「 親父(おやじ) 、5万円のパソコンを買っても100円分ぐらいしか使いこなせていないじゃないか」といなされました。

 それでもなんとか、ブログやFBで毎日のように情報を発信するようになりました。これもアンチエイジングには有効と感じています。FBも今フェイク・ニュースや炎上が問題視されているSNSの一つですが、ツイッターやインスタグラムと違い、匿名性の無責任さはありません。フェイスブック、つまり「顔」を見せることが前提のサイトなので、当然と言えば当然でしょう。もちろん、なりすましなど、ないわけではありませんが。

フェイスブック三つの効用

 10年ほど前に始めて驚いたのは、40年前のフランスの友人とつながったことです。FB側から送られてくる「友達では?」というリストに入っていたのです。多分、学会関係などのつながりで引っ掛けていくのでしょうね。そこでまず、アンチエイジングに有効な理由として、音信不通だった友人とつながることを挙げたいです。人間関係が回復できるのです。

 次に家族とのつながりです。最近では子供や孫たちとは、FBのメッセンジャーという機能でやり取りをすることが多くなりました。電話よりてっとり早いし、時間も取られません。また、FBには自分の思いや過去の回想をよくあげます。その大半は改めて子供たちに話すことではない内容ですが、FBを通じて読んでくれているようです。

未知との遭遇も楽しみ

 そして最大のメリットは「未知との遭遇」です。今、世上で問題になっていること、またそれに対する若者たちの反応。また、このところ元気のない男性たちに比べ、フェイスブックで見かける女性陣の活躍ぶりには感心させられます。そして、その女性たちとお近づきになれる 醍醐味(だいごみ) 。「そんな下心を……」などと言われそうですが、ま、そもそもFB自体が、大学キャンパスでの出会いを目的に発足したのですから、それも許されるでしょう。

ネットは衰える記憶力の補助手段

 これはFBに限ったことではありませんが、何よりもネットの有り難みは、衰えゆく記憶力の補助手段としての役割です。肝心なことは別として、ほとんどのことはパソコンのメモリーに入れておくか、ネットで検索すれば良いのですから。

 そしてネット社会の先に見えてくるのが、AI(人工知能)の世界です。ですが、AIはあくまで人間のツールの一つであり、AIに人間が使われるようになっては主客転倒です。そのためには、物心ついた時からインターネットを使っているデジタルネイティブに任せておいては危険な気がします。我々アナログから出発した人間が「経験智」で人間の主体性を確保する必要があるのではないでしょうか? またそれが、我々自身のアンチエイジングにつながるのではないでしょうか?(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オールバニ大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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