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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

コラム

脳梗塞で搬送され人工呼吸器をつけた患者 「いつくらいになりますか?」とたずねる家族にどう向き合うか

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人工呼吸器をつけたら…認識の違い

 話し合いのなかで、二つのポイントが挙がりました。

 一つは、人工呼吸器装着後のイメージが、家族と医療者の間で異なっているのではないかということでした。つまり、この家族の場合、「人工呼吸器をつけたら、長女が戻ってくるまでの数日間だけ延命できるだろう」という認識です。しかし、昇圧剤を使ったり、人工呼吸器を使用すると危篤状態を乗り切る場合もあり、「ある程度、延命をはかることができる」という認識が、医療者側にはあります。しかし、そのことを家族は十分理解できていなかっただろうというのです。

 救急搬送されていますから、家族の心中は計り知れないものであり、厳しい患者の状況を理解したり、受け入れたりできないこともあります。しかし、処置を行った後の見通しについて、「患者の病状について理解度をふまえつつ、丁寧に話を続けていくことが必要だ」という意見で一致しました。医療者にとっては容易に予測や見通しがつくことでも、一般の人にとってはそうでないことを、まさにこの場面は示していると思います。

過去の発言を「患者の意思」とみなしていいのか?

 二つ目のポイントは、患者が「苦しい思いをしたくない」と言っていた意味についてです。

 患者がどんなことを指して「苦しい思い」と言っていたのか。そして、過去の発言をもとにして、現在の延命処置にかかわる判断をすることは適当なのか。今の状況において、本人が言った言葉ではないので、なかなか判断が難しいですね。医療者から母親の今までの思いを問われ、長男はこのフレーズを思い出したわけですから、それにもかかわらず呼吸器を装着したことについては、苦渋の選択だったと思います。「家族そろって母親の最期に立ち会いたい」という思いが勝ったのでしょう。こうした場合、「苦しい思いをしたくない」という言葉が、「具体的な状況や治療を想定しているか」「相手が変わっても繰り返し述べられているか」などを吟味し、家族と医療者が話し合いを重ね、慎重に判断していくことが求められます。

家族とのコミュニケーションで

 前述したように、医療者としては、一つ一つの処置の意味や今後の見通しについて、家族がイメージできるように説明した上で、「患者が何を大切にしてきたのか」「患者にとってよいことは何か」を、家族と共に考え続け、できるだけみなが納得できるような決定ができるよう支援することが大切です。

 先の場面のことを書いた看護師は、「いつも、その日の患者の身体の変化を、家族に伝えるよう心がけている」と語ってくれました。たとえば、「昨日に比べて血圧が下がってきていますね」「少し、尿の量が減ってきていますね」など。そうすることで、家族自身が、いま患者はどのような状況になりつつあるのか、少しずつ察していくことができると思い、実践しているそうです。もちろん、「今日は昨日より手が温かくなっていますね」とか、「家族がいらしたら、目が少し開きましたね」など、良い変化も伝えていくそうです。

 こういった看護師のベッドサイドでのアプローチは、患者の変化する身体状態についての家族の理解を助け、また、最期に近づきつつあることへの認識も促していくものだと思います。(鶴若麻理 聖路加国際大准教授)

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tsuruwaka-mari

鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大准教授(生命倫理分野)、同大公衆衛生大学院兼任准教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講予定(認可申請中)。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)がある。

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2件 のコメント

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お別れの時間を共有する事とその物理的限界

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

コメント欄にもありますが、仕事としては担当医やその代理医師の仕事でしょう。 一方で、横にいる時間は看護師チームの方が長いため、ある程度意見などを...

コメント欄にもありますが、仕事としては担当医やその代理医師の仕事でしょう。
一方で、横にいる時間は看護師チームの方が長いため、ある程度意見などを共有できるとスムーズにものが運ぶ時も多いんじゃないかと思います。

本文にもあるように、人工呼吸器を使って、病状が安定すると難しい部分は多々あります。
医師も看護師も分からない今後の状況を患者家族にどう伝えていくのか?
希望的観測を口にしないことは残酷ですが、奇跡のような話をするのも結局トラブルの元です。
そして、患者家族には日常生活があるので、そのすり合わせも大事になります。
あるいは、そういう場合の枠組みを考えていくのもこれからの医療なのかもしれないですね。

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看護師さんの仕事ではないのでは?

疲れた勤務医

所属からはこういう記事を書くのは、よく納得できるが、はっきり言って看護師が対応するレベルではないと思うが、、、

所属からはこういう記事を書くのは、よく納得できるが、はっきり言って看護師が対応するレベルではないと思うが、、、

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