Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」
医療・健康・介護のコラム
市販薬で肝障害 「単剤」なら原因特定できるが、「合剤」だと……
今回は、市販薬に含まれる有効成分の「数」について取り上げます。なお、コラムの最後に、市販薬データ集『クスリ早見帖2019年版』を全国の薬局に無償で届けるためのクラウドファンディングのご案内をさせていただきました。ぜひとも、最後までお読みください。

イラスト 奥山裕美
30代の男性。毎日、ランニングをしていました。ある日、段差でつまずき、足首を強くひねり、足首の腫れと痛みでつらい状況になり、市販の解熱鎮痛薬(四つの有効成分が含まれていました)を飲み始めました。
5~6日ほど服用を続けた頃から、熱とだるさがみられるようになりました。足首の痛みはよくなりつつありましたが、だるさは熱のせいだろうと思い、その市販薬を飲み続けました。しかし、その後も熱とだるさは続き、病院を受診したところ、肝障害があることがわかり、原因について詳しく調べることになりました。
薬物性肝障害 薬の成分が複数あると原因確定できないことも
肝臓を悪くする原因には、ウイルスやアルコール、脂肪肝などいくつかありますが、医薬品を服用中の患者では薬物性肝障害についても疑う必要があります。
このケースの患者では、服用していた解熱鎮痛薬をやめたところ、発熱やだるさ、肝障害はいずれもよくなりました。同時に、ウイルスなど他の原因についても異常のないことがわかり、最終的に薬物性肝障害と診断されました。
薬物性肝障害では、再び同じ成分を含む医薬品を飲むと再発する恐れがあるため、原因となった成分を特定することが重要になります。このケースの方が服用した市販薬には、有効成分が四つも含まれていました。
有効成分が一つのものを単剤、二つ以上のものを合剤(または配合剤)と呼びますが、合剤の製品には「副作用が出た場合、その原因となる成分を特定しにくい」というデメリットがあります。
単剤は有効成分がひとつであるため、原因となる成分の特定はシンプルです。しかし、合剤の場合は、複数の成分が候補になるため、どれが原因か、なかなかはっきりしません。どの成分が原因か調べる検査もありますが、検査をしても原因となった成分の確定に至らないことも多いのです。
市販薬はなるべく単剤を選ぶ
そのため、薬物性肝障害を経験した方は、「その時に服用していた成分すべてを、今後は飲まないように」と指示される場合もあります。これは、その後の人生において、医薬品の選択肢が減ることを意味しますので、できるだけ避けたい状況と言えます。
このような副作用が万一、発生した場合のことを想定すると、市販薬を選ぶ際は、出来るだけ単剤の製品を選ぶ方がよいのではないかと思います。もちろん、合剤である必要があれば別ですが、いずれにしても市販薬を買う前に成分欄を読むようにし、単剤か合剤かについてもチェックすることをお勧めします。
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