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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

高齢者住宅内に駄菓子屋 88歳の入居者が店番 子どもが自然に集まる地域の拠点に

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近所の人も一緒にランチ

 地域に開かれた存在である特色のひとつが、ランチ。「銀木犀食堂」と称して、入居者と同じランチを1食650円で外部の人にも提供している。子ども連れで来る人も多いという。

 もうひとつが、ほとんどの銀木犀にある駄菓子屋。買った駄菓子はそのまま中で食べることができる。ひとつ10~30円程度の駄菓子だが、売り上げは毎月30万円を超える。

 子どもたちが自然に集まるようになり、開放された1階のスペースでは、ゲームをやっている子もいれば、宿題をやっている子もいるという。訪れた日は夏休み中だったため、普段より少ないとのことだったが、それでも話を聞いている間も始終、子どもたちの元気な声が聞こえて、にぎやか極まりなかった。

88歳 駄菓子屋の店番で元気に

駄菓子屋の店番に座る式守さん

駄菓子屋の店番に座る式守さん

 駄菓子屋の店番に座っていたのは、入居者の式守悦子さん(88)。浦安の銀木犀ができて間もなく入居した。実家も嫁ぎ先も東京・下町の銭湯で、何十年と番台に座ってきた。

 大所帯を離れた入居当初は、部屋にこもっていた時期もあったというが、「店番をしてみませんか」と麓さんに声をかけられたのがきっかけで、店番に座るように。子どもたちとのやりとりも、小銭の計算も慣れたもの。涙に暮れていたのがうそのように、すっかり明るさを取り戻した。

 移動には歩行器が必要だが、たたずまいはカクシャクとしたもの。「どこかお悪いところは?」との質問に、「悪いのはアタマくらいよ」と、瞬時に笑顔で軽口を返された。

最期をどこで迎えるか

 少子高齢化社会に向けて、国は、地域の人々が世代や分野を超えて丸ごとつながる「地域共生社会」の実現をうたっている。子どもたちが駄菓子屋に集まり、地域の人がランチに訪れる高齢者住宅は、まさに地域共生社会の拠点にみえる。

 この日の見学に一緒に参加していたニッセイ基礎研究所の三原岳・主任研究員は「サービス付き高齢者向け住宅では、過剰なサービスや業者による囲い込みが一部で指摘されているが、こういった地域の人が常に出入りするようなオープンな空間となっていることで、開かれた地域共生社会の役割を担う存在になっている」と話す。

 高齢者の住まいにおいては、最期をどう迎えるかという問題も避けては通れない。万が一のときに延命治療を希望するのかどうか、銀木犀では入居時のほか随時、意向を確認しているという。ほとんどの人が、延命治療は希望しないと答えているそうだ。
 ちなみに、銀木犀全体で、これまでお亡くなりになった方の7割が、銀木犀で 看取(みと) られたという。(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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常識こそが非常識である可能性も考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

僕らの頃も四当五落の受験文化は親世代にありました。 勉強したら勉強しただけ成績が良くなる、そういう幻影との距離感は子供の頃の苦しみの一つでした。...

僕らの頃も四当五落の受験文化は親世代にありました。
勉強したら勉強しただけ成績が良くなる、そういう幻影との距離感は子供の頃の苦しみの一つでした。
勿論、昨今の感覚で言えば嘘ですね。
勉強しないよりは、間違った方法でもやる方がましという程度に過ぎません。
特に大学入学後、就職後に、そういうものの影響は出てくる気がします。

自立支援、疑似家族、これらのユニークな介護での取り組みは人間社会としてはユニークでしょうか?
核家族化という高度文明化社会の穴を埋めるものです。
距離感は難しいものの、先輩とか後輩とか、世代を超えた友情というのも、人間社会において補完的な役割を果たしてきました。

最初のとっかかりがいつも高いハードルになるだけで、一緒に住んだり会うことにはそんなに問題はありません。
時間や空間の距離感が少しばかり昔と違うだけでしょう。

格差社会や一部の貧困化の進む社会中で、行き場のない子供や青年にとっても何らかの価値を創り出せるようになっていくといいですね。
責任問題や利害関係の交通整理が難しいだけで、どこでもやれるでしょう?

気持ちとか知識とか文化とか、人間には遺伝子や生命以外のものを次代に紡ぐ力があります。

僕自身、老人の扱いは得意ではありませんが、

ただ、あの世に行くまでの、暮らす場所。
労働と賃金の授受を果たすところ。

という決めつけを外せば、様々な運営の在り方も見えてくるのかもしれません。

お金さえあれば幸せになれるとか、そういう思い込みを外していくことも大事です。

一方で、お金や科学のありがたみも無視できるものでもありませんが。

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