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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

高齢者住宅内に駄菓子屋 88歳の入居者が店番 子どもが自然に集まる地域の拠点に

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介護の常識を覆すユニークな取り組み

開かれた1階の空間。外から入ってくるとまず駄菓子屋(左奥)が目に入る

開かれた1階の空間。外から入ってくるとまず駄菓子屋(左奥)が目に入る

 玄関を開けて中に入るとすぐ、陳列された色とりどりの駄菓子が目に飛び込んできた。母親らしき女性に手を引かれた幼稚園くらいの女の子が、どれにしようかと駄菓子を手に取りながら悩んでいる。

 これが、 (うわさ) の駄菓子屋か――。

 お盆休み期間の8月半ば、千葉県浦安市のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「 (ぎん)木犀(もくせい) 」を訪ねた。銀木犀と言えば、建築資材メーカーの「シルバーウッド」が運営し、千葉県内を中心に現在10か所のサ高住、2か所のグループホームがある。

 地域の子どもが集まる駄菓子屋を併設するなど従来の高齢者介護の常識を覆すユニークな取り組みで知られ、メディアにもたびたび取り上げられている。介護関係の業界では知らない人がいないと言っていいほどで、見学も絶えないという。

 今回、患者と医療者をつなぐ活動に取り組む「患医ねっと」が毎月開いている「医療と福祉を語る会」に参加した。ふだんは都内のカフェにゲストを招いて語り合うスタイルだが、企画運営を担当する病院薬剤師の川嶋直人さんが折り紙のボランティアに通っている縁で、現地を訪れての見学会となった。

サ高住は施設ではなく「住宅」。全国に約25万戸

廊下の両側に居室が並ぶ

廊下の両側に居室が並ぶ

 高齢者のための住まいの種類には、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどがある。これらは、法律上「施設」であるのに対し、サ高住は「住宅」であるという違いがある。高齢者住まい法に基づき、2011年に制度が始まった。

 広さが原則25平方メートル以上(条件によって18平方メートル以上)でバリアフリーであること、ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し安否確認サービスや生活相談サービスを提供していることなどの条件がある。事業者に対する公的な助成制度もあって急増し、一般社団法人高齢者住宅協会の2019年7月時点のまとめによると、全国で約7400棟、24万6000戸余りが登録されている。

 安否確認、生活相談サービスのほか、多くの住居で食事サービスも提供。通所介護事業所、訪問介護事業所はそれぞれ4割以上で併設されている。

オープンで自由であること 「お世話しすぎない」こと

「大切なのはお世話しすぎないこと」と話す麓さん

「大切なのはお世話しすぎないこと」と話す麓さん

 所長の麓慎一郎さん(45)に話を聞いた。麓さんは自動車販売の仕事から高齢者施設の仕事に転職、現在は夫婦で銀木犀の3か所の所長を務める。
 銀木犀・浦安は2016年12月にオープン。3階建てで42室、44人が住む。平均年齢は86・9歳。平均要介護度は1・48という。

 建物の出入り口には鍵はかかっておらず、入居者の出入りは自由。認知症のある人が「家に帰る」などと言って外に出ていってしまうケースもしばしばあるが、それも想定内のこととして対応しているという。

 「危ないから」と職員がお世話するのではなく、本人にできることはやってもらうというのが基本的な姿勢だ。
 食事の時間には、食堂のテーブルの中ほどに、ごはんのおひつや急須、湯のみが置かれる。それぞれが自分で、ご飯をよそい、お茶を入れる。自分でできることは自分でしてもらうようにした結果、入居時よりも介護度がよくなる人も少なくない。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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常識こそが非常識である可能性も考える

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

僕らの頃も四当五落の受験文化は親世代にありました。 勉強したら勉強しただけ成績が良くなる、そういう幻影との距離感は子供の頃の苦しみの一つでした。...

僕らの頃も四当五落の受験文化は親世代にありました。
勉強したら勉強しただけ成績が良くなる、そういう幻影との距離感は子供の頃の苦しみの一つでした。
勿論、昨今の感覚で言えば嘘ですね。
勉強しないよりは、間違った方法でもやる方がましという程度に過ぎません。
特に大学入学後、就職後に、そういうものの影響は出てくる気がします。

自立支援、疑似家族、これらのユニークな介護での取り組みは人間社会としてはユニークでしょうか?
核家族化という高度文明化社会の穴を埋めるものです。
距離感は難しいものの、先輩とか後輩とか、世代を超えた友情というのも、人間社会において補完的な役割を果たしてきました。

最初のとっかかりがいつも高いハードルになるだけで、一緒に住んだり会うことにはそんなに問題はありません。
時間や空間の距離感が少しばかり昔と違うだけでしょう。

格差社会や一部の貧困化の進む社会中で、行き場のない子供や青年にとっても何らかの価値を創り出せるようになっていくといいですね。
責任問題や利害関係の交通整理が難しいだけで、どこでもやれるでしょう?

気持ちとか知識とか文化とか、人間には遺伝子や生命以外のものを次代に紡ぐ力があります。

僕自身、老人の扱いは得意ではありませんが、

ただ、あの世に行くまでの、暮らす場所。
労働と賃金の授受を果たすところ。

という決めつけを外せば、様々な運営の在り方も見えてくるのかもしれません。

お金さえあれば幸せになれるとか、そういう思い込みを外していくことも大事です。

一方で、お金や科学のありがたみも無視できるものでもありませんが。

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