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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

新専門医制度 診療科ごとの養成数どう決める 患者に役立つ分かりやすい制度へ改革正念場

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2018年4月の新制度発足から1年半

 一般社団法人日本専門医機構が統括する新しい専門医制度。運営のあり方などをめぐり異論も出たなか、2018年4月にようやく船出して1年半。議論はその後どうなっているのか……。

学会認定の専門医が乱立 レベルもまちまち

新専門医制度 診療科ごとの養成数どう決める 患者に役立つ分かりやすい制度へ改革正念場

記者会見する寺本民生・日本専門医機構理事長(左)

 「制度ができて3年くらいは混乱することはあり得るというか、そういった混乱を解決していくことが制度の確立のうえで重要だと認識している」
 日本専門医機構の寺本民生理事長は8月26日、原則毎月開いている定例の記者会見で、現状についてこう説明した。新専門医制度は、3期目にあたる2020年度の研修開始にむけて9月中にも募集登録を始めるとともに、並行して21年度からの診療科、都道府県別の養成数の見直し作業を進めている。
 走りながら考える、修正を重ねるという、新制度発足前からの状況は今も変わりない。

 そもそも、専門医とは何か。
 「専門医に一度診てもらいましょう」。医療相談の回答では、よくこんなフレーズが出てくる。ここで言う専門医とは、ある特定の分野について豊富な知識、経験や診断、治療の技術を持っている医師といったイメージだろうか。

 日本で診療科ごとの専門を表す公的な資格は、国が認定する麻酔科 標榜(ひょうぼう) 医などの一部の例外を除いて、これまでなかった。診療科や分野ごとにつくられた「○○学会」が認定する「○○学会認定○○専門医」というのが、従来ある、いわゆる「専門医」だ。

 様々な学会がそれぞれ自前の専門医をつくっており、専門医の種類は把握されているだけでも100以上。同じような分野に、それぞれの学会が認定する複数種類の専門医が存在するといった分かりにくさや、学会ごとの認定の基準や専門医の質にバラツキがあるなどの問題が指摘されてきた。

第三者機関による認定で質の担保を

 第三者機関による専門医の質の担保を図ろうとの動きは、実は昭和の時代に遡る。1981年には日本医学会加盟の22学会による学会認定医制協議会が発足。その後、何度か名前や組織の形態を変更しながら、2014年に現在の一般社団法人日本専門医機構が設立された。

 ここに至るまでの過程で、第三者認定に向けた機運が盛り上がった時期もあったが、なかなかまとまるまでに至らなかった。各学会にとって専門医認定は事業の柱の一つであり、既得権であることが、その根底にある。

 新専門医制度の発足にあたっては、地域偏在などの議論を積み残したことによる「見切り発車」「拙速」などの声も一部に聞かれた。だが、過去の経緯を振り返ると、議論の開始から30年以上もかかって「ようやく」との印象が強い。

専門医の研修期間は3~5年

 医師は国家試験に合格して医師免許を取得した後、将来の開業要件となる2年間の初期臨床研修が法律で義務付けられている。内科や外科など幅広い診療科を回ることが原則だ。

 2年間の初期臨床研修を終えた医師が次に進むのが、専門医となるための研修プログラムだ。研修期間は診療科によって3~5年。医師になって最短なら5年で専門医の資格を取ることができる計算だ。専門医を取ることは法律で定められた義務ではないが、初期研修を終えた医師の多くが参加している。

基本は内科、外科など19領域

 新専門医制度では、内科、小児科、皮膚科、精神科、外科、整形外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、病理、臨床検査、救急科、形成外科、リハビリテーション科、総合診療の計19種類の専門医を基本領域と定めた。専門医を目指す医師は、まずこの19領域のうちのどれかに参加することが必要だ。

 そのうえで、診療科によってはさらに「○○外科専門医」などの細分化された専門医プログラム(サブスペシャルティー)へと進む仕組みになっている。

 日本専門医機構が示した基準に従い、各学会の研修施設は研修プログラムを策定する。それを機構が審査、認定することで、学会のお手盛りではなく、第三者機関である機構がお墨付きを与えた専門医とみなすという建て付けになっている。なお、総合診療専門医については、学会ではなく機構が直接、管轄している。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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専門医の理想と現実に苦しむ若手医師

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

人によっては専門医制度の制約がかえってマイナスで、どうなるかわからないという状況にあります。 僕も後期研修から落ちこぼれた形ですが、日本のマイナ...

人によっては専門医制度の制約がかえってマイナスで、どうなるかわからないという状況にあります。
僕も後期研修から落ちこぼれた形ですが、日本のマイナス評価社会の中で維持も大変な専門医取得に前向きになるより、実務を押さえる方にシフトしています。
画像診断専門医だって自分の専門分野以外に勉強や仕事の時間を十分に取れず雑な仕事になっているケースもあります。
これに専門医の画像診断管理加算の過重労働の問題が重なっています。
内科や総合診療で食いつないで、砂上の楼閣が崩れるのを待つ方が合理的です。

放射線科に限らず、旧来のイメージの縦割りの区分が、AIやITの介入著しい中で、医療マーケットのシェア争いの激しい中で、今後そぐわないことは想定されます。
加えて、年功序列や手触り医療、保険診療のシステムまで、システムはアメリカの模倣では矛盾や弊害が大きくなります。

これは専門医制度だけではなく、時代の歪みの蓄積であり、先送りしてきた人達の責任でもあります。
そして、専門医だけでは全ての診療が成り立たない問題もあります。

また、カリキュラムで必ず人が育つわけではなく、マイナー領域専門医を抱える施設ばかりでもなく、一段回目の専門医の人数制限には、女医の出産育児への風当たりを強くするだけだと思います。
逆に言えば、専門医以外も含めて、女医さんや旦那の出産育児との並列を見越して制度設計するべきです。

崇高な理念も大いに結構ですが、医療は社会インフラのサービス業であり、サービス受給者が過不足なくサービスを受けられるように、サービス提供者の心身の健康も含めて制度設計すべきです。
メスを置いた後の外科医の受け皿も考えずに、臨床では論文を書く人よりも論文や教科書を行間も含めて運用できる人が大事な事実も鑑みずに、制度を進めても崩壊するでしょう。
特に世襲でない医師は生存戦略として色々考えざるを得ません。

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