明るい性の診療室
医療・健康・介護のコラム
夫と「頑張る」〜挿入障害治療の基本〜
夫への「おつきあい」から変化
これらのポイントを踏まえて、最近、私のもとを訪れたある夫婦の事例を見ていきたいと思います。
Aさん(35)は結婚して3年の女性です。知人の紹介で知り合った夫(33)の転勤で仕事を辞め、現在は専業主婦です。最初は1人で来院しました。
夫との性生活では、互いにカラダや性器を愛撫(あいぶ)し、オルガズムも得られていました。しかし、夫の手がクリトリスから1~2センチ後方の腟入り口に差し掛かると、さっと体を引いてしまいます。挿入のみが怖いのです。近頃は性交以外の行為もその後の挿入チャレンジを思うと楽しめず、夫への申し訳なさから「おつきあい」で応じていました。「性交より出産はもっと痛そうで怖い。でも子供は欲しい」とも漏らしていました。
治療方法に納得し、「性器を見る」など家で練習する課題を持ち帰りました。
2度目の診察は夫妻で来られました。Aさんは家で行った練習の成果を話してくれました。今までは「性器を見てはいけないところと思い込んでいた」ことにAさんは気付き、実際は「理科の教科書を見ている」ように感じました。そして性器に触れ、頑張って指を1本入れることができ、驚きとともにうれしさがこみ上げてきました。ただ、痛みはないものの、何ともいえない不快感があったとのことでした。
妊娠へ
夫は、自分より年下にさえ見える妻にとても優しく、そのうちできるだろうと思ううちに、3年がたってしまいました。夫と一緒にいるAさんはとても甘えん坊で、何でも夫に頼っている雰囲気です。
診察でセラピーの内容を知った夫は以前ほどAさんに遠慮せず、練習を励まし、手伝うようになりました。Aさんも夫にリードしてもらいながら、「頑張る自分」を取り戻していきました。その結果、治療は時々足踏みしつつも進み、1年後には性交、そして妊娠へとつながりました。
Aさんは長らく遠ざかっていた車の運転も再開、「ペーパードライバー」を卒業して、自分で運転して来院するようにもなりました。
怖がりの反面、もともと自立心がある女性と、穏やかで健康な性欲を持った男性との組み合わせで、比較的スムーズにゴールしました。
性機能障害には、できればナビゲーターとなるセラピストによる治療が望ましいですが、自分で応用することもできると思います。
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