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思春期の子どもを持つあなたに 関谷秀子

医療・健康・介護のコラム

第8部 ADHD(注意欠陥・多動性障害)(上) 父親を「君づけ」で呼ぶ小6男子。2世帯同居から始まった「虎の威を借る」わがままぶり

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自分で注文した料理を「やっぱり美味しくなさそう」と父親に食べさせ

 A君は両親と姉の4人家族で育ちました。以前は、家族で2LDKのマンションに住んでいましたが、小学4年生になったとき、母親の実家、つまり祖父の家の敷地内に2世帯住宅を建てて、そこに住むようになりました。その地域の名士だった祖父が高齢になったため、一人娘の家族と近くに住むことを望んだためでした。

 ちょうど父親の仕事がうまくいっていないタイミングだったため、経済的な理由もそれを後押ししました。

 それ以来、A君一家の生活はガラッと変わりました。

 父親は、「祖父母が加わったことで、一つの大きな家族のようになった」と説明しました。

 まず、大きく変わったのは家族の呼び名です。

 祖母が「おばあちゃんと呼ばれたくない」と言いだしたため、祖母を「お母さん」、母親のことは「ママ」と呼ばされるようになりました。さらに、いつのまにか、祖父を「ボス」と呼ぶようになりました。

 また、祖父母がA君の父親のことを下の名前で「○○君」と呼ぶため、A君も父親を「○○君」とか「○○ピー」と呼ぶようになりました。

 A君の母親は仕事が忙しく、家事があまり得意ではありません。もともと 几帳面(きちょうめん) できれい好きな父が掃除や洗濯、料理を黙々とこなしていました。それだけでなく、妻の実家から経済的な援助を受けている負い目からか、祖父宅の買い物や病院への送迎なども率先して行い、雑用を一手に引き受けるようになりました。

 もともとA君の家では、ゲームは一日1時間半までというルールがありました。

 ルールを守ってきたA君でしたが、次第に祖父宅で何時間もゲームをするようになりました。そのうち、祖父宅に泊り、朝までゲームをしたり、動画を見たりと、エスカレートしていきました。欲しいゲームがあると祖父と一緒に買い物に行き、好きなだけ買ってもらうようになりました。

 外食のときには、自分で注文した料理を「やっぱりおいしくなさそうだから、別の物を食べたい」とわがままを言い、それを見た祖父が「もう一つ別のものを注文してやれ」というため、A君が最初に注文した料理は、代わりに父親が食べるようになりました。

家族の誰も止めない増長ぶり

 祖父は絶対的な存在であり、どんなにA君を甘やかそうと、両親は異論を唱えることができませんでした。そのため、A君はいつも祖父を通して自分のわがままを通すようになり、自分の両親との約束はなんとも思わなくなっていきました。

 家の中で一番偉いのは祖父で、2番目は祖父に 溺愛(できあい) されている自分。さらに祖母、母親、父親と順位付けをしていました。

 キャッチボールをしていたとき、「そろそろ終わりにしよう」と言った父親に腹を立て、庭のホースで水をかけたこともありました。それでも、気弱な父親が自分の息子を叱責することはありませんでした。父親だけでなく、家族の誰もA君の増長を止めません。

 欲求をすべて満たし、「自分は父親よりも偉い」と考えていたA君でしたが、一方で「いつかしっぺ返しがくるかもしれない」という恐れや怖さが心の中に生じるようになっていました。(関谷秀子 精神科医)

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shisyunki-prof200

せきや・ひでこ
精神科医、子どものこころ専門医。法政大学現代福祉学部教授。初台クリニック(東京・渋谷区)医師。前関東中央病院精神科部長。

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1件 のコメント

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障害児(ないし、者)との上手な関わり方

由翼希(ゆうき)※軽度知的障害者当事者

障害児(ないし、者)にも納得出来る健常者との関わり方って難しいと思います。障害の特性で『冗談が通じない』という症状があるのであれば、『持病で癲癇...

障害児(ないし、者)にも納得出来る健常者との関わり方って難しいと思います。障害の特性で『冗談が通じない』という症状があるのであれば、『持病で癲癇(てんかん)がある。』という見方も出来れば、『自分がどういう考え方や障害の特性を持っていて、どういう性格をしているかを把握させる。』事を出来なくは無いと思います。それでは特別支援学校を卒業するにあたり、進学しようか就職しようか悩んでいるヒトがいるとします。就職を希望するヒトに対しては、一般企業の人事採用担当者は、とりあえず冗談がどのぐらい通じるか障害児(ないし、者)に聞いてみると良いと思います。そうすれば冠婚葬祭や飲み会などの席に彼等が参加するかしないかの意思は彼らから回答がもらえるかも知れません。

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