ウェルネスとーく
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[フリーアナウンサー 大橋未歩さん](下)「お茶しよう」と誘われるのが怖かった私…「人と話すことを」とアナの道に
脳梗塞を経験し、パラリンピックに関心
――東京五輪が近づきました。パラリンピックに関心を持たれていますね。
今年1月からパラスポーツの番組をやっています。パラ取材に携わりたいと思ったのも、自分の脳梗塞の経験が大きいです。オリンピックに行きたくてアナウンサーになり、3回も現地取材したのに、パラは1回も取材していないという罪悪感がありました。
そんな自分が脳梗塞になり、約8か月後に社会復帰したとき、健常者と障害者の間に当たり前のように引かれている境界線の存在を認識し、疎外感のようなものを感じました。その経験を生かして、これまでと違う視点でパラを伝えられないかなと思いました。
私の場合、脳梗塞で4か所の脳細胞が死んだのですが、その機能は他の部分が代替してくれていると医師に言われました。「人間ってすごいな。そういうポテンシャルがあるんだ」って思いましたが、それをスポーツで体現しているのがパラ選手です。パラは、スポーツとしてのワクワクにプラス、何か気づきがあると思います。
パラ卓球アンバサダーに就任
――注目している競技は?
卓球です。日本肢体不自由者卓球協会から、パラ卓球のアンバサダーという肩書をもらいました。世界ランキング4位(8月現在)で、東京でもメダルを狙える岩渕 幸洋 選手から聞いて一番びっくりしたのは、「パラ卓球の選手は相手の障害部分を狙う」という話です。スポーツマンシップで言うと、相手のけがした部位などは狙わないのが美徳という考えもあると思いますが、パラ卓球選手の場合、相手の障害部分を狙わないのはリスペクトに欠けるって言うんです。狙われることを前提として、それを上回る戦略を立てるのがパラ選手の 矜 持なんですね。「面白いな。まだまだ知らない世界があったな」って思い、そういうことも伝えていきたいです。
こういう考え方は、妊婦や高齢の方、体が不自由な方などと向き合うときに、それぞれの弱い部分をどう受け入れていくのかということにもつながっていくと思うんです。
――ご自身も卓球大会にも出たそうですね。
3月に東京卓球選手権大会に出ました。40歳で公式戦デビューです(笑)。新しいことにはどんどん挑戦していきたいですが、元プロ卓球選手の 四元 奈生美さんなども出る大会なので正直、場違いでした。でも、大人になって恥ずかしい思いをするというのもいいかな、なんて思います。
声にコンプレックスあったのに、ラジオの仕事が来た!
――昨年10月から務めるラジオパーソナリティーの仕事はいいかがですか。
難しいです。テレビは大勢の人に語りかけますが、ラジオは1対1です。私の語りは不特定多数に語りかけているってよく注意されます。ラジオを聴いている「あなた」と向き合わなければいけないのに、つい「みなさん」って言ってしまう。そこが、まだできていなくて、課題です。でも、ラジオの文化は初めて学ぶことなので、楽しいです。声にコンプレックスがあり、ラジオの仕事が来ると思っていなかったので、すごくうれしいです。
――自分の声が嫌いだったんですか。
特徴がなくて、「輪郭がぼんやりしている」って言われたことがあり、局アナ時代はナレーションの仕事はあまり来なかったです。それが外に出てみると、違う感性で私を見つけてくれる人もいるんだとわかりました。もし、現状に何か悩んでいる人がいたら、外に出てみるのもいいよって言いたいです。
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