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心療内科医・梅谷薫の「病んでるオトナの読む薬」

医療・健康・介護のコラム

「私を捨てていくつもり?」 母の抵抗で結婚は破談…35歳女性を苦しめる「共依存」の呪縛

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共依存は子育てに必要なシステム

 「思い返してみると、お母さんは、私をずっと縛りつけていました。大学に行けなかったのも、『働いて家計を助けてくれ』と言われたからだし、ことあるごとに『具合が悪い』と言っては、私がやりたいことをやらせてくれなかった。グループで『共依存』と言われて、あらためて母に縛られた人生が苦しかったんだと思いました。私の『うつ』も、そのせいじゃないかと……」

 共依存とは、依存症、すなわち 嗜癖(しへき) の一つ。「行為嗜癖」と分類されている。アルコール依存者の家族が、依存者本人を支えるために、お互いの関係に巻き込まれている状態などが典型で、「カプセル親子」と呼ばれる関係もよくみられる。

 「でも、共依存がないと、子どもは育てられないよね?」

 とV子さんに問いかけてみた。

 「小さい子どもは無力だから、お母さんとの依存関係で命を保って育ってゆく。『共依存』は、私たちが生きる上で必要なシステムなんだと思う。ただし、それが過ぎると、いつまでも子どもを手放さない親によって子どもが苦しむことがある。あなたは今、それが苦しいとようやく気づくことができた。これからどうするか、自分で決める時が来たんだと思うよ」

 V子さんはしばらく考え込んでいた……。

シェアハウスで自由に 「人生これからだ!」

 「先生、シェアハウスにころがりこみました!」

 と、彼女が報告に来たのは、それから半年後のことだった。

 母親からの「自立」をいろいろと試しているうちに、「自分を捨てるのか!」と叫ぶ母親と、またまた大げんかになった。「そんな不義理娘はいらない。出て行け!」と言われて、これ幸いと実家を飛び出したのだ。

 「お金がないので、ほかの人たちとの共同生活。お風呂もトイレも共同なので、最初はイヤだったけど、少しずつ慣れました。親しくなってみると、いい人が多くて、いろんなことを教わります。すごく自由になった気分で、人生これからだ、って気持ちになりました」

 その後の母親との関係については、

 「相変わらずだけど、放っておいたら母も案外、元気になって、先日は友だちと遊びに行ってきたみたい。電話で『亡くなったお父さんの分まで生きなきゃ』とか言うのであきれ果てましたよ……」

 そう語るV子さんの表情は、以前より格段に明るくなっていた。母親と距離を置いたことで、気持ちが楽になったようだ。

 「でも、母には感謝しています。やはり、かけがえのない家族。どこにいても、忘れることなんてできませんからね……」

 彼女の言葉は、自立を勧めた私にとっても、一番の救いになったのだった。(梅谷薫 心療内科医)

 *本文中の事例は、プライバシーに配慮して改変しています。

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梅谷 薫(うめたに・かおる)

 内科・心療内科医
 1954年生まれ。東京大学医学部卒。90年から同大学で精神科・心療内科研修。都内の病院の診療部長、院長などを経て、現在は都内のクリニックに勤務。「やまいになる言葉~『原因不明病時代』を生き抜く」(講談社)、「小説で読む生老病死」(医学書院)など著書多数。テレビ出演も多い。

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