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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

WHO「加熱式たばこは従来製品と同様に規制すべきだ」…世界のたばこ蔓延に関する報告書

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「必ずしも健康へのリスクが減ることを意味しない」「長期的な影響はまだ不明で証拠は不十分」

 ・加熱式たばこは、たばこを含んでおり、従来型のたばこ製品のように規制されるべきだ。

 ・加熱式たばこは有毒な排出物を生み出し、その多くは紙巻きたばこの煙で見つかる有毒物質に似ている。

 ・加熱式たばこの使用者は製品からの有毒な排出物にさらされ、また周囲の人もこれらの有毒な間接排出物にさらされ得る。

 ・加熱式たばこのいくつかの有毒物質は従来型のたばこよりもレベルが低いとは言え、他の有害物質のレベルはより高い。いくつかの有毒物質のレベルが低いことは、必ずしも健康リスクの減少を意味しない。

 ・加熱式たばこはニコチンを含む。ニコチンは高い依存性があり、特に子どもや妊婦、若者の健康への害につながる。

 ・加熱式たばこの使用及び排出物の長期における健康への影響は、まだわかっていない。相対的、絶対的なリスクについての独立した証拠は今のところ不十分で、使用者や周囲の人への健康リスクを測る独立した研究が必要だ。

境界があいまいな製品が増えたことの問題

 加熱式たばこと並び、今回の報告書が問題にしたのが「電子たばこ(ENDS=電子ニコチン送達システム)」。日本ではニコチンは医薬品として薬機法で規制されるため認められていないが、世界では急速に広がっており、健康への影響などについて懸念を巻き起こしている。

 また、電子たばこには、ニコチンを含まないもの(ENNDS)もある。ニコチン入りの電子たばこ(ENDS)が規制されている日本でも、溶液にニコチンを含まない製品は、法律的にはたばこ製品にも医薬品にも当たらず、販売されている。

 新型たばこの問題をわかりにくく、ややこしくしているのは、これらの製品の中には見た目だけでは区別がつきにくいものもあることだ。田淵さんは「たとえば禁煙場所を指定して、たばこ製品の使用を禁止するのには、たばこを吸う行為そのものを認めないと伝える意義もあるのだが、電子たばこが許容されてしまうと、こういった意義が弱められてしまう。たばこの定義を分かりにくくするということは、実はこれまでもずっとたばこ会社が意図的に仕向けてきたこと。これからのたばこ対策を進めるうえでの大きな課題となってきた」と、指摘している。

世界で毎年800万人以上が死亡

 最後に、WHOが報告書とともに公表している、世界のたばこ問題のカギとなる事実を列記して話を締めくくろう。

 ・たばこによって喫煙者の半分は命を失う。

 ・たばこによって毎年800万人以上が亡くなる。うち700万人以上は直接喫煙の結果で、約120万人は非喫煙者の受動喫煙によるものだ。

 ・世界で11億人いる喫煙者の約80%は、低中所得国に住んでいる。

(田村良彦 読売新聞専門委員)

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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