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のぶさんのペイシェント・カフェ

コラム

名刺に自分のキャッチコピー 自分の生き方を医師や薬剤師に伝える

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「人が変わっていくきっかけを、つくりたいんですよ」

 夏の暑さが厳しい日。汗をぬぐいながら、いつものカフェのカウンター席に座り、アイスコーヒーを頼んだ。障害と病気を持ったマスターが、手際よくコーヒーを () れていく。

 カウンターから聞いてみた。
「マスターは、何をしているときがいちばん楽しいんですか?」

 この前、マスターに楽しそうだと言い当てられたこともあり、逆に質問してみた。
手を動かしたまま、答えてくれる。
 「私を介して、誰かに新しい発見や、その人の生活に変化があったときですかねえ」

 透明の氷が入ったグラスに、ドリップした熱いコーヒーが流し込まれた。急冷させてアイスコーヒーを作ってくれるらしい。

 「人が変わっていくきっかけを、つくりたいんですよ。人と人をつなぎ、よりよい生活環境を実現させる……という感じですよね」

仕事とは別のオリジナル名刺を作る

 マスターから突然、名刺を差し出された。

 「人と人をつなぎ、よりよい生活環境を実現させる」とキャッチコピーが書かれている。一見、カフェとは結び付かない文言だ。

 しかし、合点がいく。うん、だから、マスターはいろんな方に話しかけて、変わるきっかけを探しているのかもなぁ。

 「自分のキャッチコピーって考えたことあります?」
 マスターがチラッとこちらを見て言う。
 いや、そんなこと、あるわけない。そもそも発想すらない。

 「自分が何を大切にして、何を実現したいと思うのかって、文字にしないと伝わらないですよね。だから、自分のオリジナル名刺を作って、プライベートでも使っているんです」

自分がどう生きたいのかを主治医に伝える

 カウンターの隣にいた常連客も興味を持ったらしく、会話に入ってきた。それを聞いていると、どうやらマスターは、この名刺を病院では主治医に、薬局でも薬剤師に渡しているという。“自分のキャッチコピーを作り、周りの人に伝える”。それが、健康になるための第一歩らしい。

 以前、マスターは、健康とは単に病気がないだけではなく、精神的、社会的にも満たされていることだという話をしていた。そのためには、自分の生きる軸を持ち、それを周囲のみんなにも広めておくということか。当然、自分がどう生きたいのかを知ってもらうべき医師に真っ先に渡したら、医師も興味を示してくれたそうだ。

 医師、薬剤師、そして歯科医師にも名刺を渡すのか。名刺がきっかけで、自分の人生の中で大切にしていることや、健康に対する意識などについても、話題が膨らむきっかけになるんだろうな。

名刺交換から深まる患者・医療者関係

 医療者によっては自分の名刺を渡してくれたそうだ。確かに、医療において、医師と患者は、ビジネスパートナーとも言えるから、名刺交換から始まるのもよいかもしれない。

 話はもっぱら、隣の客とマスターで、名刺を使った医療現場での実例紹介になった。聞いているだけでもおもしろい。

 医療者は最初は驚くものの、案外普通に受け取ってくれて、そこから会話が発展することが多いそうだ。それは、まさに自分の生き方を医師が理解し、治療方針を決める一助になる。

 私は、その隣で、解けた氷で十分に冷たくなったアイスコーヒーを喉に流す。さわやかだ。

自分のキャッチコピーは何だろう

 さて、自分のキャッチコピーは何だろう。
 いまの自分だったら「妻と娘のためにがむしゃらに働く健康オヤジ」といったところか。

 自分のプライベート名刺。インターネットでも簡単に作れる。マンションの管理組合や同窓会で配るのも面白そうだ。自分の人生観を表す名刺を作って、配ってみようかな。
 どうやら、マスターを介して新しい発見があり、私の生活に変化が起きそうだ。

一枚の名刺があなたの医療環境を変えるかもしれない

一枚の名刺があなたの医療環境を変えるかもしれない

 下町と言われる街の裏路地に、昭和と令和がうまく調和した落ち着く小さなカフェ。そこは、コーヒーを片手に、 身体(からだ) を自分でメンテナンスする工夫やアイデアが得られる空間らしい。カフェの近所の会社に勤める49歳男性の私は、仕事の合間に立ち寄っては、オーナーの話に耳を傾けるのが、楽しみの一つになっている。

(※ このカフェは架空のものです)

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のぶさんのペイシェント・カフェ

鈴木信行(すずき・のぶゆき)
患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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1件 のコメント

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人生色々、名刺も色々

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

公式、準公式の役職だけでなくて、キャッチコピーとか特技とか書いてあると話は広がりますよね。 僕の名刺にも色々書いてあります。

公式、準公式の役職だけでなくて、キャッチコピーとか特技とか書いてあると話は広がりますよね。

僕の名刺にも色々書いてあります。

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