Dr.えんどこの「皮膚とココロにやさしい話」
医療・健康・介護のコラム
夏は虫刺され患者急増 怖いアナフィラキシーショック
こんにちは。皮膚科医のえんどこです。しかし暑いですねー。熱中症対策などは特にしていないつもりなのですが、他の人よりも汗っかきのせいか、いつの間にか意識的に水分をとるようになっています。まあ水分といってもビールとかハイボールですが……。うーん、いけませんね(笑)。
刺す、吸う、触れる…発症様式はいろいろ
皮膚科の外来をやっていると、夏本番になるにつれ、虫刺されの患者さんが急増していることに気づきます。蚊であったり、ブヨ(ブユ)であったり、ハチに刺されたりなどいろいろで、その症状も、かゆみが中心のもの、痛みを強く伴うもの、また非常にまれではありますが、全身に強いアレルギー症状が出るアナフィラキシーショックに至ってしまうものなど、全てが同じではありません。
私は3月末まで岩手県にいたものですから、初夏になると毛虫などによる皮膚炎にはよく遭遇しましたが、現在のように東京在住になってからはとんとお目にかかることはなくなりました。「こういう発疹なんだよー」と若い先生に話してはみるものの、実際の発疹を見てみないとやはりピンとこないようですね。
虫による皮膚疾患の発症様式は、 刺咬 、吸血、接触、寄生、媒介の五つに分けられます。刺咬とは、ハチやアリ、クモのように、虫が自らを守るための攻撃としてヒトの皮膚を刺したり 咬 んだりすることで、吸血とは、蚊、ブヨ、アブなどのように虫が栄養源として皮膚から血を吸うことをいいます。接触は、チャドクガやその幼虫(毛虫)などのように、虫のもつ有毒成分と皮膚が接触して発疹が生じることをいいます(寄生と媒介については今回は省略します)。
感作とは「私の体にはもうこの物質は合いませんよ」状態
刺咬の代表となるのはハチですが、毒針を刺すことにより毒成分(痛みの成分など)が皮膚に注入され、 疼痛 、発赤などの症状が出現します。そして、その毒によるアレルギー反応として、じんましんが生じたり、場合によってはアナフィラキシー症状が出現することがあるため注意が必要です。
吸血で身近なのは、やはり蚊でしょう。蚊は吸血する際、唾液腺物質(かゆみの成分など)を皮膚に注入します。これが、かゆみを促す理由とされています。
接触はまさに触れることが原因ですが、ドクガ類の幼虫(毛虫)の毛にはアレルギーの元となる物質が含まれており、この幼虫との接触で皮膚に毛(毒針毛といいます)が刺さることで毒の成分が皮膚に入り、「感作」が成立することで、再度同様の接触があった場合に皮膚炎症状が生じてしまいます。
感作というのは、わかりやすく言うと、「私の体はこの物質は受け付けない、合わない」というように、体がその物質のことを合わないと覚えてしまった状態を言います。例えば、皮膚科には、内服薬を飲んで全身に発疹が出てしまい、受診する患者さんが多いのですが、その場合も、毎日飲んでいて問題なかった薬剤のはずなのに、いつの間にか感作が成立してしまい、急に合わなくなって発疹が出てしまうわけです。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。