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がん患者団体のリレー活動報告

コラム

NPO法人「がんのママをささえ隊ネットワーク ETERNAL BRIDGE(エターナルブリッジ)」

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 がんと診断された時に、18歳未満の子どもがいる患者は年間5万6000人を超え、その子どもは年間約8万7000人いると、国立がん研究センターがん対策情報センターが2015年、推計値を発表しました。とりわけ、乳がんや子宮がんなど女性特有のがんで若い患者が増えており、「がんになる子育て中のママ」は今後、総計でかなりの数に上ると考えられます。

がん体験談や悩みについて語り合う参加者の母親たちとスタッフ(2018年1月、福岡市内で)

がん体験談や悩みについて語り合う参加者の母親たちとスタッフ(2018年1月、福岡市内で)

子育て中の女性がん患者の苦悩

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がん治療中のママとその家族のための点心クッキング教室で一緒にギョーザの皮を延ばす親子ら(今年2月)

 子育て中の女性がん患者は「妻・母親・親の介護などを控えた娘」として家庭内で重要な役割を担っています。働いている方は、中堅世代ゆえに職場での責任も小さくありません。このような重責とがん治療の両立に大きなストレスを抱えてしまうことが多いのです。

 また母親として子どもを守ろうとするあまり、身近な人にも容易に相談できずに一人でストレスを抱えがちです。そのストレスは親子関係や家庭内での調和に影響し、がん治療においても悪影響を与える可能性があります。

 しかし、同じ悩みを抱えた女性たちが集い、悩みや不安を共有して支え合う「ピアサポート」の場はまだまだ足りていません。医療の現場においてはがん治療が優先され、がんになったことを母親が子どもへどのように伝えたら良いのか、終末期が訪れた時に子どもとどのように向き合えば良いのか、などの疑問・不安に対する助言・支援はほぼ皆無ではないでしょうか。

 このような現実は、終末期の親子の対話や関係をより複雑で困難なものとし、子どもの心身の成長や発達を妨げる大きな要因になってしまいます。

悩みを打ち明け、支える場を毎月提供

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ウォーキングレッスン教室でストレッチをする講師の村松記久子さん(正面左)と参加者(2017年3月)

 そこで私たちは、がんを患う子育て中のママが交流して支え合える場、がん治療中でも親子の絆を深められる場、がん治療中のママを家族や周りの人たちが理解し支えることができるようになる場を毎月、福岡県を拠点として提供し、それらのための情報提供や支援の輪を広げる活動を行っています。

 子連れ参加可能なイベント以外の時は必ず無料託児所を用意しています。福岡県には、豊富な人生経験と知識を持つ60歳以上の高齢者が、子育てに悩み、奮闘する親を支える「ふくおか子育てマイスター制度」があるのですが、その組織の一つ「あゆみ」に参加する皆さんがボランティアとして手伝ってくださっています。

どんな悩みも受け付ける「SOS&相談メール」

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食材の選び方や考え方について語る食教育プランニングコーチの永原味佳さん(正面奥)。自身、がん治療経験者でもある(2018年6月)

 また、治療・子育て・生活など、どんな悩みや不安でも、そしていつでも相談できる「SOS&相談メール」窓口をホームページに設け、ママたちの不安解消に努めています。そうすることで治療期全般にわたり、病気と向き合いながらも親子関係を良好に保つことができれば、その経験は「PTG=Post‐traumatic Growth(心的外傷後成長。心の傷を受けた後の人間的成長や深化のこと)」となり、親にとっても子にとっても困難を乗り越える力になると確信しています。

「出産に立ち向かう希望が湧いてきた」

 不安を抱えたがんのママたちが、交流会を重ねるごとに少しずつ前を向いていき、次に参加される不安の中にあるママたちの支えになっていく姿に感動を覚えます。

妊娠と同時に乳がんであることが分かり、強い不安から「SOS&相談メール」に相談をしてこられたお母さんがいらっしゃいます。彼女から下記のようなメッセージをいただきました。

 「温かい文章を夫と二人で読んで、気持ちの面で大変救われました。また、同じような思いを持って出産に立ち向かった方がいるとのこと、希望が湧いてきました。試練は続くと思いますが、これからは夫婦二人で悔いのない選択をしていこうと決めました。このご縁を大切にして、おなかの子が大きくなった時には、みんなの協力であなたを産むことができたんだよ、と教えてあげたいです」

 将来的にはがん治療中であることを隠さなくてもよい社会、がん治療という困難を家族で乗り越えられる社会、がんと向き合う親子を社会で支えられる環境を実現していきたいと考えています。そして、すべての子どもたちが母の愛とともに強く生きぬくことができる世の中になることが、母親としてこの活動を支えているスタッフの思いです。

 <その他の感想の一部>

・当事者から
「乳がんになって、一時期は何も考えられない時期がありました。周りの方の支えで少しずつ前向きに考えられる自分を知りました。病気になった原因を考えるのではなく、病気になって自分ができること、やりたいことを見つける。そして、私もこの経験から人の役に立てることが目標です!」

・患者のご主人から
「皆さんつらい時期を乗り越えてとても元気で明るくすてきだなと思いました。気持ちがとても楽になり、前向きに妻をサポートしていきたいと思うことができました。ありがとうございました。病気の話をこんなに話せてわかってもらえる場所がなかったのでとても良かったです」

NPO法人「がんのママをささえ隊ネットワーク ETERNAL BRIDGE(エターナルブリッジ)」

 2016年10月、乳がん診療の現場で子どもを残して亡くなる母の姿を見てきたママさん医師が、治療中の母子の絆を支えたい、と前身の非営利団体「びょうきのママをささえ隊」を発足。17年7月にNPO法人化した。

 団体の趣旨に共感した株式会社九州電化副社長の山田佳代子が現在、代表者となり、ママ仲間、がん治療中の仲間とともに福岡県を拠点に活動している。

 正会員は現在11人、ボランティア会員は20人ほどで、これまでに100人近いがん治療中のママとその家族が参加している。ホームページは「ママ ささえ隊」で検索を。SNS(ブログ、フェイスブック、インスタグラム、ツイッター)でも情報を発信している。

 ホームページ  http://www.sasaetai.or.jp/

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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