文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

【1】ギャンブルの沼 1 元刑事の転落と再起

シリーズ「依存症ニッポン」

元刑事の転落と再起(下) 回復施設で気づいた「本当の過ち」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

依存症専門の回復施設に

 執行猶予付きの判決を受けて釈放された後、ある支援団体の世話を受けながら、仕事を探していた。自分がどう生きていけばいいのか、どの道を歩いていけばいいのか、まったく見えていなかった。

 そんな折、人から山梨県の「グレイス・ロード」を勧められた。そこは、「ギャンブルをしない日常生活の構築」「生き方の修正」を目指す、国内では数少ないギャンブル依存症専門の回復施設だった。

 サポートするスタッフ全員は依存経験のある当事者で、毎日のミーティング、地域における交流活動などを通して、社会復帰を後押ししてくれるとの話だった。

 「どうしようもないところに落ちていましたから……。自分がギャンブル依存だとは自覚していなかったけれど、悪循環から抜け出すために進むべき道が示されて、助かったかなとも思いました」

 そう考え、山梨県甲斐市に出向いた。

 施設内では、多くのギャンブル依存の人たちとの共同生活となった。

 朝の掃除から始まり、グループミーティング、調理実習、スポーツなどをこなしながら、ほかの依存症(アルコール、薬物、暴力、窃盗など)の自助グループへの定期的な参加も義務づけられる。さらに利用者の個々が抱える問題や悩みについて話し、ほかの参加者とのコミュニケーションによって新たな「気づき」を得る「エンパワーメント・グループミーティング」も定期的に行われる。

 しばらくの間は「ただそこにいるだけ」だった。

 自分に問題があるわけではない。どこかで、ちょっと間違ってしまった程度と考えていた。変えなければいけないところなど思いつかなかった。

 ほかの参加者の話を聞いても、正面から受け止めることなどできなかった。「かったるいな」「みんな、よく言うよ」「オレと一緒にするなよ」……。

 とはいっても、どんなに面倒くさくたって、ほかに自分のいる場所はない。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

someya_prof

染谷 一(そめや・はじめ)

読売新聞東京本社メディア局記者
 1988年読売新聞社入社、出版局、医療情報部、文化部、調査研究本部主任研究員、メディア局専門委員などを経て、2021年5月からメディア局メディア編集部記者。

シリーズ「依存症ニッポン」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

【1】ギャンブルの沼 1 元刑事の転落と再起

最新記事