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心のアンチエイジング~米寿になって思うこと

コラム

性欲という「虎」を乗りこなす

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性欲という「虎」を乗りこなす

 僕は「アンチエイジング塩谷塾」という8回の連続セミナーを毎年開いていますが、20名という小グループなので、回を重ねるうちに皆打ち解けて、本音がボロボロと出てきます。そうなった頃合いを見計らって取り上げるテーマが、「いくつになっても男と女」です。これは塩谷塾を主宰するNPO法人アンチエイジングネットワークのスローガンでもあります。と言っても「失楽園」を推奨しているわけではありません。では、どうすれば?というのが悩ましいところではあります。

米寿を迎えても気持ちは動く

 実は数年前、ちょっとショッキングな経験をしました。僕は八ヶ岳に山小屋を作り、休日には山での生活を楽しんでいます。往復に中央高速を使いますが、途中談合坂というレストエリアでちょっと休憩します。そこにもスターバックスがありますが、ある時そこには入らずにそばのベンチに腰掛けていました。スタバのカウンターでは従業員仲間が2、3人立って話をしています。そこに若い、すらっとした女の子が仲間に入ってきました。すると僕は反射的に、あ、この子からカップを渡してもらえるなら、コーヒーを頼んでもいいか、と思ってしまったのです。無意識のうちにそう思ったので、我ながらびっくりしました。

 でも、米寿になっても男とはそんなもんですね。それでいいんだというのが「いくつになっても男と女」ということです。

高齢者にとっても性は重要な問題

 もっと深刻な問題もあります。もう50年近くも前に作家の有吉佐和子さんが、認知症をテーマにした「恍惚の人」という小説を出版して話題になりました。まだ認知症という言葉が生まれる前です。「恍惚の人」はボケ老人の代名詞になったくらいです。そのあとがきで有吉さんはこう言ってます。

 「この本の中で私は老人の性の問題には触れていません。実はこれが最大の課題ということはわかっているのですが、それを扱うとそれが主体の話になってしまうので、あえて避けたのです。」と。

 そして最近になってやっと老人でも性に無関心ではないということが言われ始め、老人ホームでの男女関係が取りざたされるようになってきました。実はこういう伝え話もあります。

 森鴎外があるとき母親に「女はいつまで性に関心があるのか?」聞いたそうです。よく息子が母親に聞けたとおもいますが、母親は黙って火箸で火鉢の灰をかき回したとされています。灰になるまで、つまり死ぬまでということのようです。その森鴎外が性的自伝「ウィタ・セクスアリス」の終わりで、性欲を虎にたとえてこう言ってます。

 「虎に乗っていると、若い時は虎に振り回されてけがをすることもあるが、年とともに虎もおとなしくなり、御しやすくなる」と。

 確かに加齢とともにリビドーは弱くなりますが、なくなるわけではありません。身体的に不自由になる分、かえって人によっては関心が強くなることもあるようです。ここで大切なことは、たとえ乗り手が老いては来ても、やはり虎に乗っているということです。

人が生きるには性ホルモンは不可欠

 つまり人間が生きていくためには、性ホルモンは不可欠だということです。たとえ生殖機能が失われても、細胞の活性化には性ホルモンが一役も二役も買っているというのが最近の我々の認識です。

 NPO法人アンチエイジングネットワークを手伝ってくれているのが、札幌医大の名誉教授熊本悦明君です。医学部のクラスメートですが、泌尿器が専門で、男性更年期の旗振り役です。

 「いくつになっても男と女」というモットーも彼の発案です。NPOスタート以来、「男の抗加齢は俺に任せろ、女はお前に任せる」と言われ僕は女性専科に甘んじていますが。その熊本君が主張するのは、性欲と食欲はどちらも、生存に不可欠な本能だということです。高齢者に食欲があるのは、健康な証拠とされます。同じように性欲も健康な証拠で、はしたないとか、年がいもなくなどと言われる筋合いのものではないのです。

 ただ、その発現にあたっては、社会的規範への配慮が必要ですが。その社会的規範が昨今揺らいできているのが問題だと思っています。(塩谷信幸 アンチエイジングネットワーク理事長)

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shioya_prof

塩谷信幸(しおや・のぶゆき)

1931年生まれ。東京大学医学部卒業。56年、フルブライト留学生として渡米、オルバニー大学で外科および形成外科の専門医資格を取得。64年に帰国後、東京大学形成外科、横浜市立大学形成外科講師を経て、73年より北里大学形成外科教授。96年より同大学名誉教授。日本形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会名誉会員。NPOアンチエイジングネットワーク理事長、日本抗加齢医学会顧問、アンチエイジング医師団代表としてアンチエイジングの啓蒙活動を行っている。

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1件 のコメント

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人間だもの 理性も本能もある

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

僕も草食系や僧職系あるいは曹植系なので、不思議がられます。 一方で、人間関係や法律のドロドロが怖ければ、バカは言っても行動は控えめになりますよね...

僕も草食系や僧職系あるいは曹植系なので、不思議がられます。
一方で、人間関係や法律のドロドロが怖ければ、バカは言っても行動は控えめになりますよね。
器用か否かで、立ち振る舞いも変わるんじゃないかと思います。
SNSとかで情報も拡散しやすいですしね。

人それぞれでしょうが、女性の方が激しいことが多いと言われるのは集団の種族維持本能のせいかもしれませんね。

真面目に生きちゃバカを見る、って昔の歌にありましたけど。

おそまつな状態です。

それでも、何かよくわからない人に慰謝料と養育費を多額に請求されるよりはましだと思っています。

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