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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

睡眠薬と寝酒 どっちが安心?

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日本で登場した期待の睡眠薬

 三つ目のタイプは、脳内のオレキシン受容体に作用するタイプです。オレキシンは脳を覚醒させるホルモンです。このタイプの睡眠薬は、オレキシン受容体に結合して塞いでしまう(占有する)ことで、脳内のオレキシンが作用しにくくなり、眠気が生じます。14年に、世界に先駆けて日本で登場した最も新しい期待の睡眠薬です。

 この睡眠薬も、依存性や認知機能の面で安全性が高く、高齢者でも安心して使えます。作用時間も少し長めで、中高年の方に多い睡眠の後半で中途覚醒してしまう不眠にも効果があります。オレキシン受容体に作用する睡眠薬もまだ1種類しかありませんが、現在、いくつもの製薬企業が新薬開発を進めているため、数年以内に何種類か登場する可能性があります。

「不眠症の方は使用しないでください」?

 ちなみに、市販されている睡眠薬は安全なのでしょうか?

 市販の睡眠薬の多くは「ジフェンヒドラミン」という抗ヒスタミン薬(アレルギー治療薬)です。ヒスタミンは強い覚醒効果を持つ脳内ホルモンです。ジフェンヒドラミンは、脳内に入るとヒスタミン受容体に結合してヒスタミンの作用を妨げるため、強い眠気を引き起こします。ジフェンヒドラミンは現在、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などの薬として病院で処方されているのですが、強い眠気が生じる副作用が問題視されて、最近はあまり使われなくなりました。市販の睡眠薬は、その「副作用」を「作用」として用いるという「裏技」を使った薬剤です。

 実は、ジフェンヒドラミンが本当に慢性不眠症を改善するかは、信頼性の高い臨床試験で実証されていません。そのため、旅行や夜勤などで一時的な不眠症状(つまり普段はちゃんと眠れる)にある人しか使ってはいけないことになっています。実際、パッケージの中に入っている使用上の注意書きをよく読むと、「不眠症の方は使用しないでください」と書いてあります。でも、勘違いして服用しないように、箱の外側に大きく見えるように書いておくべきでしょう。

処方も安全性重視へ

 これまで、医師が睡眠薬を選ぶ時には、寝つきの悪い不眠には作用時間が短いもの、中途覚醒や早朝覚醒には作用時間の長いものなど、主に作用時間の長さによって決めていました。ところが最近では、冒頭に挙げたように、睡眠薬に対する懸念が高まり、副作用が少ないものを選択するなど安全性を重視するようになっています。

 次回は、「睡眠薬はボケ(認知症)の原因になるのか?」というご質問についてお答えします。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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