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田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

がんの生存率とは? 集計データごとの特徴や違いを知ろう

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最新の院内がん登録集計結果を公表

がんの生存率とは? 集計データごとの特徴や違いを知ろう

 国立がん研究センターは8月8日、全国のがん診療連携拠点病院などの「院内がん登録」による新しい集計結果を公表した。それによると、2012年に診断された患者の3年実測生存率は67・2%、相対生存率は72・1%、2009~10年に診断された患者の5年実測生存率は58・6%、相対生存率は66・1%だった。2017年にがんと診断された患者数や治療の内訳などについても公開された。公表されたデータは国立がん研究センターのウェブサイトでみることができる。

 「院内がん登録」や、「実測生存率」、「相対生存率」――。がんの統計にはいくつもの専門用語が登場する。データを正しく理解するためには、これらの用語の意味や使われ方の違いを知っておきたい。

 また、国などから発表されるがんの全国集計には、今回の院内がん登録をはじめ、いくつかの種類がある。主な違いや意味を説明しよう。

国や都道府県のがん対策の基礎データに

 <全国がん登録> 今年1月、2016年に全国で新たにがんと診断された患者数は、延べ約99万5000人に上ったとの結果が発表された。これは、がん登録推進法に基づいて同年から開始された「全国がん登録」に基づく初めての実数による集計結果だ。

 従来のがん患者数は、自治体での集計結果(地域がん登録)を基にした推計値だった。全国がん登録は、すべての病院に報告を義務付けたことなどによって、実数による把握を可能にした。

 結果は、地域がん登録による前年の患者数よりも約10万人多い、100万人に迫るもの。ちなみに延べ人数なのは、一人の患者が別の種類のがんにかかる場合もあるためだ。

 患者数を正確に把握することは、がん対策の基本となるものであり、関係者にとって長年の悲願でもあった。全国がん登録は、全国の実態だけでなく、都道府県ごとのがんの 罹患(りかん) や診療の状況を知る基礎データとなる。今後、年数の経過とともに「生存率」も公表される見通しだ。

病院ごとのがん診療の実態を把握

 <院内がん登録>8月に国立がん研究センターから全国集計結果が報告された「院内がん登録」。がん患者を多く診ている専門の病院で、もともと独自に自身の病院におけるがん患者のデータを登録し、治療成績の把握などに活用していたのが院内がん登録だ。

 専門病院として治療法の違いによる治療成績を評価することなどを目的にしており、全国がん登録よりも詳しい内容にわたるのが特徴。院内がん登録を行うことが、がん診療連携拠点病院の要件のひとつにされたことに加え、がん登録推進法でも専門病院における院内がん登録の役割が位置づけられた。

 今回発表された2017年の全国集計では、がん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、都道府県推薦病院に任意参加の病院の計842病院が参加。約102万件のデータが集められた。病院ごとに、がんの種類や進行度(病期)ごとの患者数、手術や放射線などの治療法の実施数などを知ることができる。

「実測生存率」か「相対生存率」か? 生存状況の把握割合は?

 院内がん登録に基づく全国集計として今回合わせて発表されたのが、2012年に診断された患者の3年生存率と、2009~2010年に診断された患者の5年生存率だ。5年生存率は、主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、女性乳房)について、病院別の成績も公表されている。

 生存率とは、がんと診断されてから何年後かの患者の生存割合で、いくつかの計算方法がある。

 このうち実測生存率は、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率。一方、相対生存率は、がん以外の死因による影響を取り除くため、同じ性・年齢構成による一般の集団の生存率(期待生存率という)で実測生存率を割ったもの。実測生存率よりも相対生存率の方が高い値になる。

 がんの生存率をみるうえで重要なのは、患者の予後をどれだけ追跡調査できているかの割合(生存状況把握割合)だ。把握できないケースの中には患者が死亡している場合があり、把握割合が低いと生存率は実際よりも高く出てしまう問題が指摘されている。生存状況の把握割合が低い生存率は、信頼度が低い。

 今回発表された生存率は、把握割合が90%以上の施設のデータが集計の対象とされた。たとえば5年生存率では、338施設のうち2010年の把握割合が90%未満だった61施設は集計から除かれた。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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