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医療・健康・介護のコラム
高校野球の投手起用論争 「スポーツにケガはつきもの」でいいのか?
投球数の制限は必要か
夏真っ盛りです。この季節になると、まず高校野球を思い浮かべる人も多いと思います。
今年は、甲子園出場のかかる岩手県大会の決勝戦で、大きな議論が巻き起こりました。大会屈指の好投手とされた大船渡高校のエース・佐々木朗希選手が、故障のリスクを考慮した監督の判断で登板をせず、同校は甲子園出場を逃すことになったのです。
近年は投手の投球数の制限についても注目を集めています。昨年、本コラムでも2回ほど、野球選手の投球における障害について書きましたが、この機会にもう一度、子どもや学生スポーツとケガについて取り上げてみたいと思います。
小学4年で野球を始めたV君は、中学生になると、肘を曲げ伸ばしにくくなったように感じていました。ピッチャーをしていたことで、最初は投球時に痛みを感じる程度でしたが、それが常時出るようになりました。医療機関でエックス線を撮影した結果、上腕骨の軟骨の障害を指摘されました。
肘の曲げ伸ばしに後遺症が残ることも
成長期の野球選手が投球する時に感じる肘の痛みは、内側が痛くなるケースが圧倒的に多いです(成長期に起きる野球肘 「治す」から「防ぐ」へ)。
肘の外側に痛みがある場合、上腕骨小頭という部分の骨と軟骨に損傷が起こる、離断性骨軟骨炎を発症している可能性があります。このケガは、自然治癒に非常に時間がかかり、完全に修復されなかったり、肘の曲げ伸ばしできる範囲が狭くなる後遺症が残ったりすることもあります。肘を休めるだけでは改善しない場合は、遊離した骨軟骨片を手術で摘出したり、膝や 肋骨 の骨軟骨を肘に移しかえたりします。
離断性骨軟骨炎は、遺伝や内分泌的な因子も原因として挙げられていますが、投球動作によるストレス負荷がもっとも大きな要因です。下半身と体幹の使い方や柔軟性、それに投球フォームに問題があると、投球動作の過程で肩や肘への負荷が増大します。
また、過剰な投球数は、肩や肘への直接的な負担を増やすだけではありません。疲労による下半身や体幹のコンディション悪化が重なることで、肩や肘への負担をさらに増やす結果となります。
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