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急な膨らみ すぐ受診を…人工乳房でがん死亡例?手術停止

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専門医に聞く

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自主回収の対象となった人工乳房(東京都港区のブレストサージャリークリニックで)

 乳がんで失った乳房を人工乳房で再建する手術が今、ストップしています。7月25日、血液がん(悪性リンパ腫)を発症するリスクがあるとして国内で使われる製品が自主回収になったからです。患者はどう対応すればよいでしょうか? この手術経験が豊富なブレストサージャリークリニック(東京都港区)院長の岩平佳子さんに聞きました。(中島久美子)

 ――なぜ自主回収に?

 「米食品医薬品局(FDA)が、人工乳房を入れた人のうち世界で573人が悪性リンパ腫を発症し、33人が死亡したと発表したのがきっかけです」

 「人工乳房を入れたことで、なぜ悪性リンパ腫が起きるのか、因果関係は不明です。発症の頻度は、3800人~3万人に1人、25万人に1人などの報告があります。FDAの分析で、特定の製品に発症率が高い傾向があることがわかりました」

 ――回収対象の製品は?

 「アラガン・ジャパン社の人工乳房2製品と、人工乳房を使う前に、乳房の皮膚や筋肉を伸ばすために乳房に入れて使うエキスパンダー(拡張器)1製品です。日本では、公的医療保険の対象で現在使われている製品がほかにないため、手術が止まっています」

急な膨らみ すぐ受診を…人工乳房でがん死亡例?手術停止 専門医に聞く

人工乳房の自主回収の影響について語る岩平佳子さん

 生涯検診続けて

 ――既に人工乳房を入れた人はどう対応すればよいですか?

 「悪性リンパ腫が疑われる場合、乳房が急に膨らむ、人工乳房周辺に痛みや赤みが出るなどの兆候が報告されています。症状のある人はすぐに受診してください。早期なら、人工乳房と周囲を摘出すれば治ります」

 「こうした症状がなければ、摘出は不要です。ただ、術後の定期検診を欠かさないこと。人工乳房を入れている間は生涯、検診を受けるべきです」

 ――予定していた再建手術ができなかった人は?

 「メーカーは9月に別の製品を販売する予定です。保険の対象ですが、人工乳房が破損した時に中身が漏れやすいなどのデメリットもあり、国内では現在、販売されていません。特徴について医師から十分説明を受け、納得して選んでください」

 「自分のおなかや背中の組織を使う方法も保険が適用されます。上手に手術ができる医療機関は限られています」

  別タイプ選択肢

 「これとは別に、複数の医療機関が、FDAが問題視していない人工乳房を輸入する準備を進めています。自費診療になりますが、選択肢の一つです」

 「がんの摘出と同時に再建できず、思いがけず、乳房のない生活を送るのはショックでしょう。時間がたっても美しい乳房は再建できます。ただ、人工物を体に入れるリスクもしっかり理解してください。国は、患者にとっての最善策を講じ、混乱を一刻も早く収めるべきです」

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