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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

母さんを目で追う父さん 「それは依存」の指摘にドキッ…若年性認知症の丹野智文さんに聞く(上)

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お互いに疲れ切ってしまう

 丹野  何でもやってもらうのが当たり前になると、当事者は、常に家族の姿を目で追うようになります。それって、認知症の症状ではなく、「依存」だと思うんですよね。家族が「この人のためにこんなに頑張ってる」といいながら、世話を焼かずにはいられないのも、ある意味「依存」です。お互いに依存しあって、お互いに疲れ切ってしまっている面があるように、私には見えるんです。

 岡崎  うち、まさにそれです。何をするにも時間のかかる父に対して、母は口ではブーブー言いながらも、先回りしてやってしまいがちです。それに慣れてしまった父は、「次はこれをしてくれるだろう」と、母の動きを目で追っているときがあります。

 ただ、もっと高齢で症状が進んでいる人の場合は、やはり手厚いケアが必要です。家族の負担を減らすのも、そう簡単ではないように思うのですが。

 丹野 もちろん、45歳の私と80代、90代の重度の認知症の人では、異なる点も多いです。だからこそ、「認知症」とひとくくりにして、何でも先回りしてやってしまうのはおかしいと思うのです。自分でできることは任せて、本当に必要なサポートをしてあげてほしいです。

 岡崎 見極めが難しいですね。

 丹野 何に困っていて、どうしたいと思っているのかを本人に聞けばいいんですよ。病気がかなり進んでいる人でも、ちゃんと話をしたら、答えてくれます。

 実はうちも、最初はちょっと過保護かもしれないと感じる面がありました。妻に「会社まで、車で送り迎えしようか?」なんて言われたことも。突然、「認知症」といわれて、家族もどう接していいかわからなかったんでしょうね。

 私はどこへでも一人で行くので、よく道に迷います。でも、人に聞けばだいたいは親切に教えてくれるし、それでもダメならタクシーを使えばいいんです。それなのに、認知症だとわかったとたんに「迷うかもしれないから」と、一人で外出させてもらえなくなった人がたくさんいます。

「心配だけど信用してる」

 丹野  今は、私が講演などに出かけている間、妻は友達と女子会を開いたりして自分の時間を過ごしているようです。私が道に迷って帰宅が遅くなった時でも、「最終的にちゃんと帰ってくるんだから、いいじゃない」なんて言ってますね。

 岡崎  どっしりと構えていますね。うちだったら、なかなかそんなふうにはできないかも。

 丹野  確かに、他の家族と違うんですよね。一度、「心配じゃないの?」と聞いたことがあるんです。そしたら、「心配はしてるよ。でも、信用してるから」って。

 岡崎  家族も、もっと認知症の人を信用しなくちゃいけないですね。ただ、健康に関することになると、やっぱり心配で干渉してしまいます。父は糖尿病なのですが、とっても食いしん坊で、特に甘いものに目がないんです。隙あらばつまみ食いをする父とのバトルの連続でした。

 でも、父がだんだん年を取るのを見て、生きる楽しみも大事という気持ちが大きくなってきました。薬をきちんと飲むようにして、「あれダメ、これダメ」と言うのをやめて、今はお互いのストレスゼロを第一に考えています。

 丹野  私も、「寿命が縮む」って言われたとしても、好きなものを食べたいなぁ。認知症にいいといわれるものを家族が食べさせようとする話も、よく聞きます。うちの妻も一時期、ココナツオイルにはまってました。アイスクリームにかけると、独特の匂いがあるし、冷えて固まって最悪(笑)。「これを食べても、何にも変わらないよ」と言ったら、やめてくれました。

 本人がもともと好きなものならともかく、イヤイヤ食べて、どれほどの効果があるんでしょうか? 認知症の進行を抑えるなら、毎日を楽しくいきいきと暮らす方がよっぽど有効だと思います。

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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