文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

写真が語る がん闘病のその奥にある温かな心

病気のイメージを変えたい

 手術後の感染症で入院が長引き、窓側のベッドにいた患者が先に退院していなくなったある日、カーテンを開け放った窓から久々に見えた外の風景。

 ステージ4のスキルス胃がん。つらい抗がん剤治療中や、手術後に出かけた旅の先々で、満面の笑顔で映るカップル。

 ウェブサイト「がんフォト*がんストーリー」には、がんの患者や体験者、家族、友人、医療者らから投稿された写真が、がんの種類や年齢などとともに、状況を説明する短い文章を添えて掲載されている。テーマは「わたしの好きな時間」「治療中の()(てき) なできごと」「家族のこと」など。

 サイトを運営する代表のフォトグラファー・ライターの木口マリさん(44)は、「闘病は決してつらいことばかりではなく、病気になったことで気づかされる自然や人の心の温かさもあります。そんな患者や家族、医療者の思いが詰まった写真を見てもらうことで、世の中のがんのイメージを変えたい」と話す。

麻酔から覚めたら人工肛門に

 がん治療中の木口さん。「脱毛コスプレをやってみた。いずれもほとんど髪はない状態」(写真は木口さん提供)

がん治療中の木口さん。「脱毛コスプレをやってみた。いずれもほとんど髪はない状態」(写真は木口さん提供)

人工肛門を造った時の入院中の自撮り。髪が生えかかりで「野球少年みたい」

人工肛門を造った時の入院中の自撮り。髪が生えかかりで「野球少年みたい」

 木口さん自身も、がんサバイバーだ。2013年5月に子宮(けい)がんが見つかり、2度の手術を受けた。脱毛などの副作用とつきあいながら抗がん剤治療を続けるなかで、さらなる悲劇が襲った。

 その年の12月、激烈な腹痛で病院に運ばれた。がんの手術の合併症から腸 閉塞(へいそく) を起こしていたのだ。緊急手術のおかげで一命は取り留めたものの、麻酔から目覚めると、おなかには人工肛門(ストーマ)がつくられていた。

 「人工肛門になるかもしれないという説明を事前に聞いていなかったこともあり、直後はがんと分かった時以上に精神的に落ち込みました」と木口さん。1月末に退院。一時は一人でトイレにも行けなかったつらい時期を乗り越え、闘病中の思いを残そうとブログを書き始めた。

1 / 2

tamura-yoshihiko_profile

田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

田村専門委員の「まるごと医療」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

幸福への数学 虚数解iの変換と応用

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

最近楽しんでいる匿名質問箱で「大志を抱いてください」と来ました。 ヨミドクでも、明るい、真面目、不真面目などと様々な投稿をさせていただいているよ...

最近楽しんでいる匿名質問箱で「大志を抱いてください」と来ました。
ヨミドクでも、明るい、真面目、不真面目などと様々な投稿をさせていただいているように、一貫して大志を抱いていられるような大物でもなければ、いつも明るくしていられるほど心が強くもなければ、闇も抱えています。

英語論文よりも新聞投稿というのは幸福か不幸かわかりませんが、医学部社会で偉くなるのには向いてません。
データと所属付きで同じことを書けば医学社会の仕事です。
ある意味で光栄なことですが、学会でも似たような演題や発表も見かけるようになりました。
多分、どこかの医局や企業のブレーンとかの方が向いているんでしょうけど、生き方や個性の相性の合う個人や組織と巡り会っていません。

普通でない事、専門家の事、それらは一般的な事ではありませんし、時には贅沢な悩みとか努力不足と捉えられてしまうこともあります。
そういう価値観や社会的な問題も含めて自分の中でもどう解決していいかわからない時もあります。

癌患者もそうですね。
癌は不幸な出来事。
それはある一面では、ある部分では事実です。
でも、働きづめで何も気づかずにある日交通事故で死ぬより幸福かもしれません。
逆に、何も考えずに一瞬で死ぬ方が幸せかもしれません。
それは、色んな捉え方、切り取り方があります。

数学の3次関数、4次関数、もう感覚的にしか覚えてませんが、見る角度、切り取る線や面によって形は変わりますよね?

素因数分解や関数、虚数で考えれば、いくつものパーツに切り分けて、いじくって、嘘でも真実にでも楽しめる時間、笑える時間をつくるというのは再現性のある技術です。
SNSの時代は、昔の天才の医者や芸能人、文人以上の可能性を持った繋がりや偶発性に溢れています。
僕もいつもポジティブでも善人でもいられるわけではありませんが、何かのヒントになればと思います。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

最新記事