40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる
医療・健康・介護のコラム
年金が2000万円足りないって本当? 定年後は「夫婦でアルバイト」のリアル
この夏、「年金が2000万円足りなくなる」ということが話題になりました。ことの発端は、6月上旬に公表された金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書です。その中に、下記の記述があります。
●報告書(全51ページ)の21ページ目
夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる。 |
(金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書より抜粋)
この一文が、「年金が2000万円足りない」の根拠のようですが、報告書の目次に目を通せば、文書の目的が年金不足の糾弾でないことはわかります。本来の目的は、ザックリ言えば、「高齢者向けの金融サービスは、どうあるべきか?」ということです。論点がズレていると感じるのは、私だけでしょうか?
「人生100年時代」と言われ始めた3年前
この報告書で私が最も着目したのは、冒頭の「『人生100年時代』と呼ばれるかつてない高齢社会を迎えようとしている」という部分です。金融庁が公表する文書の中に、「人生は100年」というフレーズが登場する時代になったのか、と。
あっという間に市民権を得た「人生100年時代」ですが、そのキッカケは、『LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社刊)という本がよく売れたことです。この本の初版は、2016年10月なので、3年前、にわかに「人生が100年になった」=「長寿化が現実味を帯びた」といったところでしょうか。
『LIFE SHIFT』で語られているテーマの一つに、人生の組み立て方そのものを変えた方が適切なのでは?という提案があります。つまり、「教育→仕事→引退」という三つのステージで人生を考えるのは、長寿社会では無理だということ。例として、1971年生まれの人が最終所得の50%を確保したいのなら、毎年所得の17.2%を貯蓄しなければならないと、本の中では試算されています。
所得の17.2%を貯蓄する!? そんなに貯蓄ができる40代は、全体の何%いるのでしょうか? 少なくとも、私には全く手が届かない数字です。大学生1人と中学生2人、合計3人の子供を抱え、教育費負担がピークですから……。
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