Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」
医療・健康・介護のコラム
息子に市販のかぜ薬をもらって飲んだら、心臓の持病が……
市販薬では解熱鎮痛薬のアスピリン 医療現場では血栓予防に
さて、今回は病院や診療所で処方されるアスピリン(アセチルサリチル酸)について説明します。ここから、こんがらがりやすいです。ゆっくり読んでみてください。
アスピリンは、市販薬では解熱鎮痛薬として使われていますが、医療現場では、解熱鎮痛薬としてはあまり使われてはいません。解熱鎮痛薬には、アセトアミノフェンやロキソプロフェンなど、別の成分がよく使われています。では、アスピリンは医療現場から姿を消したかというと、そんなことはありません。アスピリンは、今回のケースと同様、抗血小板作用を期待して、よく使われています。
ここで抗血小板作用について説明します。血液の中には血球成分が三つあります。赤血球と白血球と血小板です。血小板は、けがをして血管が損傷を受けて出血したときなどに、止血のために働きます。血管の損傷部位に血小板が集まり、粘着するなどして止血を促すのです。そして、その止血の役割を邪魔する方向に働く作用を抗血小板作用と呼びます。血小板に 抗 う作用、ということです。
そして、医療現場では、その抗血小板作用を期待して、アスピリンが使われているわけですが、それが期待されるのは、血管に血栓(血の塊)が詰まって発症する病気を防ぎたい状況にある患者の場合です。今回のケースで登場した、心臓の血管が詰まって発症する心筋梗塞の予防以外にも、脳の血管が詰まって発症する脳梗塞の予防にも使われることがあります。
アスピリンとイブプロフェンの併用に注意
そして、心臓や脳の病気の予防のためにアスピリンを服用している患者に、イブプロフェンを併用すると、アスピリンによる心臓や脳の病気を予防するための効果が弱くなることがあります。このことは日本の市販薬の一般の方向けの添付文書には書かれていませんが、米国の市販薬には書かれています。
アスピリンの効果を減弱してしまう医薬品は、イブプロフェン以外にもあります。市販薬の添付文書には、高齢者や、医師または歯科医師の治療を受けている人は、医師や薬剤師、登録販売者に「相談すること」と書かれています。「市販薬は軽い薬だから、害はないだろう」と軽くみている方も時に見かけますが、決してそんなことはありません。安全を第一に考え、慎重にいきましょう。(医師 平憲二)
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アスピリンとイブプロフェンの関係は忘れてましたが、それ以外にも様々な相性の悪い薬があって、原則禁忌と相対禁忌のカテゴリーがあります。
市販薬もそうですが、漢方薬も軽く見られがちですね。
漢方薬は実質的に西洋薬の合材のようなものも多いですし、市販薬も合材が多く、最近は薬局で医薬品も買えるようになって大変紛らわしい部分があります。
そして、なにより、風邪は積極的な診断ではなく、結果的に風邪だったとわかる除外診断が基本ですから、仮にやすやすと受診はしないとしても、定期的な連絡などは重要だったのではないかと思います。
市販薬や受診を巡る問題はデリケートですが、医療者と患者の双方から少しずつ変わっていくしかないですね。
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