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Dr .ヒラの「知って安心 市販薬の話」

コラム

息子に市販のかぜ薬をもらって飲んだら、心臓の持病が……

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 今回は、ご高齢の方のケースです。家族も登場します。いつ何時、同様の場面に遭遇しないとも限りません。ご高齢ではない方も、ぜひとも最後までお読みください。

イラスト 奥山裕美

イラスト 奥山裕美

 一人暮らしの70代男性。かかりつけの診療所に通い、毎日、処方された薬を飲んでいました。食事の準備や買い物は自分でできますが、診療所は自宅から遠いため、診察日は近くに住む息子が車で送迎してくれます。

 ある日、のどの痛みが出て、翌日から37度台の熱と鼻水、 (せき) も出始めました。息子は受診をすすめましたが、「診療所は混んでいる。他の人にうつしたら申し訳ない。かぜくらいでは受診はせん。市販薬で十分だ。いつもそうしている」と言い張り、受診しようとしませんでした。そして息子に、「お前が持っている薬をもらえんか」と頼み、息子の家にあった市販のかぜ薬をもらいました。

 その薬を飲み始めて2日後に息子が訪問すると、男性は「胸が締め付けられる。しんどい」と顔色も悪く、つらそうにしていたため、息子は救急車を呼びました。搬送先の病院で急性心筋 (こう)(そく) と診断され、そのまま入院となりました。

アスピリンの心臓保護効果を、市販のかぜ薬成分が弱める

 このケースの男性には心臓の病気が元々あり、心臓を保護する目的で、アスピリン(アセチルサリチル酸)を毎日服用していました。

 一方、服用した市販のかぜ薬には、イブプロフェンが含まれていました。イブプロフェンをアスピリンと同時に服用すると、アスピリンの心臓を保護する効果を弱めることがある、ということが知られています。

 また、その市販薬には自律神経(交感神経と副交感神経)に影響を及ぼす成分が入っており、脈が速くなったり、血圧が高くなったりする副作用の恐れがありました。脈が速くなったり、血圧が上がったりすると、心臓への負担は増えることになります。

 さらに、このケースでは、経過中に胃もたれが出てきて、食べる量が普段の1~2割程度になっていました。その結果、脱水状態になってしまい、血管が詰まって発症する病気にかかりやすくなっていました。

若い人に効く薬が、高齢者には危険なことも

 このケースでは、ご高齢で、心臓の薬を服用中である上に、上記のように、複数の悪い条件が重なり、急性心筋梗塞という心臓の血管が詰まって発症する病気になってしまいました。市販薬を飲んでいなくても発症していたかもしれませんが、いずれにしても、診療所を受診しておけばよかったと、後悔されるケースです。

 過去のやり方で、いつもうまくいくとは限りません。また、若い方に効く薬は、高齢の方にとっては危険な製品である場合もあります。本人にも家族にも、慎重さが求められます。

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dr.hira-prof150

平 憲二(ひら けんじ)
 1966年、宮崎県生まれ。総合内科専門医。株式会社プラメドプラス代表取締役。91年、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒。2001年、京都大学大学院医学研究科博士課程内科系専攻修了(臨床疫学)。03年、京都大学病院総合診療科助手。05年に株式会社プラメド、13年に同プラメドプラス設立。著書に「クスリ早見帖ブック 市販薬354」(南山堂)、「クスリ早見帖副読本 医師が教える市販薬の選び方」(PHP研究所)、「クスリ早見帖ポッケ かぜ・解熱鎮痛・咳止め・鼻炎の市販薬」(大垣書店)。

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1件 のコメント

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市販薬と漢方薬は軽く見られがちですが。

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

アスピリンとイブプロフェンの関係は忘れてましたが、それ以外にも様々な相性の悪い薬があって、原則禁忌と相対禁忌のカテゴリーがあります。 市販薬もそ...

アスピリンとイブプロフェンの関係は忘れてましたが、それ以外にも様々な相性の悪い薬があって、原則禁忌と相対禁忌のカテゴリーがあります。

市販薬もそうですが、漢方薬も軽く見られがちですね。
漢方薬は実質的に西洋薬の合材のようなものも多いですし、市販薬も合材が多く、最近は薬局で医薬品も買えるようになって大変紛らわしい部分があります。

そして、なにより、風邪は積極的な診断ではなく、結果的に風邪だったとわかる除外診断が基本ですから、仮にやすやすと受診はしないとしても、定期的な連絡などは重要だったのではないかと思います。

市販薬や受診を巡る問題はデリケートですが、医療者と患者の双方から少しずつ変わっていくしかないですね。

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