文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

田村専門委員の「まるごと医療」

コラム

「『ニセ医学』に騙されないために」の著者が教える「最善の健康法」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

過剰な検査は医療費の無駄遣いにも

id=20190729-027-OYTEI50003,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

 ――検査の害とはどういうものですか?

 日常診療でもそうですが、頭を打ったからCTを撮ってほしいとか、 (せき) が出るからレントゲンを撮ってほしいといった、検査を求めて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。もちろん検査をして何もなければ安心されるので絶対にしないわけではないですが、現状は明らかに過剰検査です。

 検査をすることは一見、だれも損をしていないように見えます。患者は安心できるし、医師は考えなくて済むし、検査をせずに病気を見逃して訴えられるリスクも減る、病院側は検査代がもうかる。

 ですが、どんな医療行為にも、利益と同時に害があります。検査についても例外ではありません。放射線被ばくや合併症といった直接的な害だけではなく、検査をしたことで別の病気の疑いが見つかって余計な心配ごとが増えたり、不要な治療につながったりする可能性もあります。医療費の無駄遣いも大きな問題です。利益と害を比較して、利益のほうが大きい場合にだけ検査を行うといった判断が必要です。

検査には害もあることを知って

 ――CTなどに限った話ではない?

 血液検査などを含め、あらゆる検査がそうです。たとえば、インフルエンザの検査。発熱や咳で苦しいからという理由ではなく、検査を受けるために受診するという患者さんが多くいます。なぜかと尋ねると、みんな受けているし、学校や会社でも診断が必要だと。

 しかし、インフルエンザの診断は、特に検査をしなくても症状などからできます。逆に検査をしても、感染しているのに正しく結果が出ない偽陰性のことだってあります。

 ――がん検診はどうですか?

 日本で推奨されているのは「胃がん」「子宮 (けい) がん」「肺がん」「乳がん」「大腸がん」の五つです。それぞれ推奨する検査法、受診の年齢や頻度が定められています。こういった検診については、利益と害を十分に理解したうえで、受診を検討するのがよいでしょう。

 ただし、がん検診は何でもやみくもに受ければ良いというものではありません。現状では、がん死亡率を下げる根拠がないまま行われている検診もあります。また、検診には、最終的には精密検査でがんと診断されないもののがんの疑いがあるとされてしまう偽陽性、一生涯症状が出ないがんを診断してしまう過剰診断といった害があります。こうしたがん検診の害は過小評価されていると思います。

疑似科学を正す

 ――ところで、そもそも名取さんが、ニセ医学などの問題にかかわり始めたきっかは何ですか?

 インターネットやパソコンが普及し始めた2000年頃、インターネットの掲示板で疑似科学の問題に取り組み始めたのが最初です。やがて、科学全般ではなく私の専門である医療の問題に特化するようになり、2004年にブログを始めました。

 たとえば、「がんと診断された」という患者さんのネット上の書き込みに対して、「治療を受ける必要はない」「代わりにこの食品がおすすめ」といった有象無象の書き込みがされているのを目にすると、さすがに見過ごすわけにはいきません。

 ――名取宏というのはペンネーム?

 実はニセ医学の本を最初に出した時の著者名は「NATROM(なとろむ)」でした。NATROMは、もともとインターネットの掲示板で使っていたハンドルネームで、今もネット上では使っています。

 ただ、インターネットを見ていない人には何のことか分からないし、さすがに怪しい(笑)という話もあって、「ニセ医学」の新装版を昨年出版するにあたって、「名取宏」というペンネームに変えました。本職は、病院に勤務する内科医です。

 ――実際の臨床ではどうされているのですか?

 検査を求める患者さんには一応こういったことを説明はするのですが、大勢の患者さんが待っているなかで延々と時間をかけるわけにもいかず、求められれば検査をすることもよくあります。患者さんの満足度も考慮してのことです。実臨床の場で納得していただくのは、時間的にも困難です。本を書いたのは、健康なうちからこういうことを知っておいてほしいという思いがあります。

 ――ネット上の情報を見極めるにはどうしたらよいでしょう?

 たとえば、がんであれば国立がん研究センターといった公的な機関のサイトを調べるのがまずは基本です。怪しいサイトは慣れると雰囲気で分かりますが、たとえばものを売っているところは要注意。最終的にその商品を買わせるために情報を出している可能性があります。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

tamura-prof

田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

田村専門委員の「まるごと医療」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事