思春期の子どもを持つあなたに
コラム
第7部 ヒステリー(転換性障害)(上)原因不明の足の異変、そして不登校。母親には甘えながらも、暴言を吐き、包丁を向ける中2女子
ヒステリーは身体疾患がないのに、さまざまな葛藤や欲求不満が、身体面の障害(失立失歩、失声など)として表れる。児童期・思春期以降の女性に多く見られるが、男性も発症する。ヒステリーは詐病とは違い、わざと身体症状を起こしているわけではない。
突如発症した原因不明の足の異変で車椅子生活に
A子さんは中学2年生の女の子です。約1年前から、「急に足に力が入らなくなる」と訴えるようになりました。時々、痛みも生じるようになったようで、そのうち立ち上がることも、歩くこともできなくなりました。小児科の検査では異常は見つからず、 鍼灸 やマッサージも効果はありませんでした。
症状は徐々に悪化していき、やがて車椅子の生活になりました。
通学していた中学校はバリアフリーで、教師たちがA子さんに理解を示し、協力的に接してくれました。また、同級生らも車椅子を押したり、荷物を持ったりして手助けをしてくれていたそうです。そんな周囲の気遣いにもかかわらず、A子さんは間もなく不登校になってしまいました。
母親によれば、A子さんの足に異変が出始めた中学1年生前後から、母親に、べたべたと甘えてきたり、ハグを求めたりする一方、暴言や暴力などの問題行動も出現したそうです。不登校をきっかけに、その傾向がエスカレートしてきたため、母親に連れられてクリニックにやってきました。
母親の手作りケーキを「まずい!」と投げつけて
A子さんの母親は診察室に入ると、暗い表情でまず自分自身のことを話し始めました。
職場恋愛の末に20代で結婚し、A子さんをすぐに妊娠しました。ところが、その頃から夫はあまり家に帰ってこなくなり、夫婦仲は悪くなっていったそうです。
母親は妊娠中から実家で生活し、出産も終えました。
それ以降も、自宅には戻らなかったため、父親は生まれたばかりのA子さんに会うため、たびたび妻の実家を訪れていたのですが、夫婦仲の修復には至らず、A子さんが1歳半の時に離婚しました。
祖母の助けを借りながら、母親は働きに出るようになりました。やがてA子さんが小学1年生になる頃に再婚をしました。父親の記憶なしに育ったA子さんは、当初は「パパが欲しかった」と母親の再婚を喜んでいたそうです。義父はA子さんを実の娘のようにかわいがり、3人で穏やかな毎日を過ごしていました。
ところが、A子さんが初潮を迎えた小学6年生の頃から徐々に義父を避けるようになりました。自分だけ食事の時間をずらしたり、義父を無視するようになったりしたそうです。
母親と一緒にクリニックの診察室に入ってきたA子さんは、中学生なのに、母親の手を握ったり膝を触ったりと甘えることが多く、幼児返りしている様子でした。
「自分で立って、歩けないことについて話してみたら」と母親に促されても、「何にもない。大丈夫」と言葉少なで、一刻も早く、診察室から出ていきたい様子を隠しませんでした。私は、それ以上無理にA子さんの話を聞くことはせず、次回に母親に一人で来院してもらうことにしました。
母親によれば、A子さんが暴言を吐いたり、暴力的な行動を取ったりするようになったのは、足に異変が出始めたのとほぼ同じ時期だそうです。
「ママの手作りのケーキが食べたいから作ってほしい」と頼みながら、いざそれを口にすると、「まずくて食べられない」と、出来たてのケーキを投げつけたことがあったそうです。また、就寝時に母親が「おやすみなさい」と言うと、「心がこもっていないから、眠れない」と、暴力的な行動に出ることもありました。ひどいときには、包丁を向けたこともあったそうです。
問題行動に出たときに、制止しようとした義父に対して、A子さんは「お前は関係ないから引っ込んでいろ」と怒鳴りつけました。それ以来、義父は何も言わなくなり、トラブルが起こっても自分の部屋から出てこなくなったそうです。
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子供が思春期の親の離婚や死別について
由翼希(ゆうき)※知的障害者当事者
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