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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

コラム

「飛行機内は砂漠より乾燥」「酔いにくい席」「前日に発熱した時」…子連れ旅の注意点は?

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機内では常に飲み物を用意

 先にお話ししたように、機内は乾燥しています。常に飲み物を用意しておくことが大切です。機内放送のスクリーンをじっと見られない子どもには、年齢に応じた本やおもちゃ、ゲームの準備があるといいかもしれません。航空会社のウェブサイトには、子連れで搭乗される場合に使える様々なサービスが掲載されています。ANAの「小さなお子様連れのお客様向けサポート」(国内線)JALの「ベビーおでかけサポート」(国内線)など。また、最近はアレルギーの子どもが増えていますが、航空会社に事前に伝えておくと、アレルギー食対応をしてくれることがあります。

 また、子どもが機内でケガをすることもあります。ひじ掛け、テーブル、シートベルトの金具、トイレの扉、物入れなど、機内には指を挟むリスクが高いものが数多くあります。やけども要注意です。小さな子どもや子どもを抱いている人は、熱い飲み物は避けた方がよいでしょう。飛行機が突然揺れることもありますし、子どもの動きは読めません。サービスのコーヒーやスープをこぼし、やけどしてしまうケースもあるようですから、油断は禁物です。

 子どもに限らず、成人も含むデータですが、2013年のNEJM誌に投稿された論文によると、機内のドクターコールで最も多いのは失神で、その多くはいわゆる立ちくらみ(起立性低血圧)でした。機内は乾燥していて脱水になりやすく、トイレに立ったときなどにふらついて倒れてしまうケースが多いようです。これらの立ちくらみは疲労や睡眠不足でも起きやすいのですが、機内では子どもより保護者の方が疲れが大きく、体調不良になるケースもあるようです。お子さんの心配もありますが、くれぐれもご自身の体も忘れずに気遣っていただければと思います。

助手席のチャイルドシートは危険

 次に、自動車での旅行についてお話しします。

 意外に多いのが、旅行中の交通事故です。海外のデータですが、旅行者の死亡原因としては、感染症より交通事故の方が多くなっています。また、旅行中の子どもが外傷を負ったケースで最も多いのは、自動車事故だとされています。

 わが国の「チャイルドシート関連統計」では、チャイルドシートを使わなかったケースの致死率は、適正に使っていた場合の約16倍と非常に高くなっています。6歳未満の子どもを車に乗せるときは、必ずチャイルドシートを使用しなければいけませんが、警察庁と一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の合同調査では、2018年のチャイルドシート使用状況は66.2%でした。少しずつ増えていますが、まだまだ改善の余地があります。この調査によると、助手席での使用が少なくありませんが、開いたエアバッグにチャイルドシートが弾き飛ばされたり、押し付けられて窒息したりする可能性があり、非常に危険です。チャイルドシートは、原則、後部座席で使用すべきです。

視界がよく、揺れの少ない座席を

 自動車に限らず、乗り物に乗ると、気持ち悪くなったり、ふらついたりする症状が出ることがあります。いわゆる乗り物酔いです。これは、どの年代の子どもでも起きうるものですが、特に4~10歳の子どもに多いとされています。

 年長の子どもに多いのは吐き気です。基本的には予防が大切で、視界がよく、揺れの少ない座席を選ぶとよいと言われています。バスや自動車なら前方の座席、飛行機なら翼のある位置になります。乗車中は、読書やビデオゲームなど視覚的な刺激を避けることも大切です。年長の子どもなら、症状が出た場合に備え、酔い止め薬を飲んでおく選択肢もあります。日本で販売されている薬は、交通機関を利用する30分~1時間前に服用すると効果が4~6時間続きます。ただし、含まれている抗ヒスタミン薬などの作用で興奮するケースもありますので、万能薬として捉えず、薬局で処方上の指示をよく聞いて使用してください。

 飛行機内でお子さんが吐いてしまうことも少なくありません。子どもの着替えは機内に持ち込んでいても、親の着替えは預けてあり、汚れたままでいなければいけないケースもあるようですからご注意ください。

旅先では初めての食材を避ける

 ここまで、乗り物にかかわるお子さんの健康についてお話ししてきました。最後に、一般的な旅行の注意点について少しお伝えします。

 まず、旅行先では、お子さんに初めての食材にトライさせることは、なるべく避けた方がいいでしょう。初めての食材でアレルギーを発症してしまった場合、旅行先の見知らぬ病院に行かなくてはいけません。アナフィラキシーを起こしてしまった場合は、入院が必要になる可能性も高くなります。

 また、お子さんの熱の出方も知っておいていただきたいと思います。子どもは、朝、熱がなくても、午後から上がってくる可能性があります。前日に発熱した場合、当日の朝には熱が下がっていても、再び発熱する可能性があります。

 日程の急な変更は、予約などの関係もあり難しいかと思います。ただ、観光県である長野で働いている私は、旅行中にお子さんが体調不良になり、ご家族で外来に来るケースを数多く診察してきました。せっかく旅行に来たのに、旅行を切り上げ、とんぼ返りしなければならないケースも多いのです。旅行前、お子さんの体調が悪いようなら、無理をせず計画を再検討していただければと思います。

 なお、意外と知られていませんが、ご家族の病気が理由で旅行をキャンセルする場合、航空会社によっては(ANAJAL)、特例として料金が全額払い戻し可能なことをご存じでしょうか。医師の診断書が必要です。いざというときはご活用ください。

 お子さんは急性疾患が多いので、旅行中に体調を崩した場合のホームケアについても知っておいていただければと思います。私たちの「教えて!ドクター」プロジェクトでは、病院受診やホームケアの参考になるよう、無料アプリを制作しています。iPhoneとAndroidの両方でリリースしていますので、いざというときのためにも、ぜひご活用いただければと思います。

 それでは皆さん、楽しい夏の思い出ができますように!(坂本昌彦 小児科医)

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)
 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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