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明るい性の診療室

妊娠・育児・性の悩み

性の喜びのために、女性こそ「必修」としては

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大川玲子(婦人科医)

 「マスターベーション。男子必修 女子選択」

 ある男子高校の保健の先生がこう語ったそうです。だいぶ前のことですが、男子にとっては安心や肯定感を得られたことでしょう。女子選択、というのも当時としてはなかなかリベラルであります。

 今回の主題は女性のマスターベーション(自慰)のススメです。理由のひとつ目は一人で楽しめ、誰かを傷つけることがない点です。相手を気にせず練習もできます。ふたつ目は、性的快感を体験する安全な方法で、健康被害は起きない点です。

男女で体験に差

 米国の性科学者ミルトン・ダイアモンドが20世紀後半に書いた書籍によると、男性は20歳くらいまでに90%以上が自慰を体験します。女性は幼児期に体験する人が少しおり、性交体験などを通じて徐々に増え、40歳くらいまでに60%程度に達します。

 筆者が1995年に大学生に行った調査では、自慰の体験を持つのは男子で98%、女子31%でした。男女差がとても大きいことが分かります。調査では性交の経験も聞いており、男子31%、女子47%で、自慰と性交体験との関係も男女に違いがあるようです。

 調査では、自慰のきっかけを質問しましたが、女子の多くが「性交体験から」で、本や友達からの情報はわずかでした。今ではインターネット上にあふれる情報をきっかけに自慰を体験する女性は増えているかもしれません。

 今井伸先生が5月中旬のコラムで、インターネットを通じての情報が、男性にとって性的な興奮に望ましくない影響を与えている可能性を指摘しており、女性も受け取る情報の取捨選択が必要と思われます。

気分を盛り上げる幻想も練習に必要

 男女どちらも自慰の体験は二人で性行為(セックス)をするための基礎的な練習になります。女性では、快感体験、オルガズム体験をして自分のからだを知っておくと、相手に好みを伝え、性行為を楽しむことができるでしょう。

 自慰は、性反応がうまく起こらない性機能障害の解決の糸口になるでしょう。ただ、「さて、やってみよう」と思っても簡単ではないのは、男子では、今井先生が6月下旬のコラムで回顧談を書かれた通りです。女子はもう少し複雑です。

 私は性的快感を得られずセックスが苦痛という女性に、外来で自慰の指導をしています。女性の自慰の基本は「クリトリスへのソフトなタッチ」となります。クリトリスは女性の体で最も性的に敏感な器官であり、練習によってほぼ確実にオルガズムを得られるようになります。

 小さな女の子が偶然家具の端などに性器があたって、不思議な感覚を体験し、自慰を覚えることは知られています。ですが、性への羞恥心を身につけた女性が、一人寝室でオイルやゼリー剤などを使って性器をタッチしても、性的な快感やオルガズムを得られるとは限りません。気分を盛り上げる性的な幻想をいっぱいに抱きながら、繰り返し練習することが求められます。

 性的刺激に敏感な部位はクリトリス周辺に広がっています。直接触れられて刺激が強いと感じる場合は、周辺からや下着の上から触れるほうがうまくいく場合もあります。振動を起こす機器のバイブレーターは指に比べてやや強い刺激なので、応用編とすると楽しみ方が広がるように思います。

一度体験できれば次は容易に

 女性には、男性の射精のようなオルガズムの明確な指標がありません。このため分かりにくさはあるのですが、一度「これがオルガズムだ」と体験できれば、次に快感を得ることは難しくありません。

 近年、解説書も出回っているようです。少し古い本になってしまいますが、「ハイト・リポート」(シェアー・ハイト、石川弘義訳、パシフィカ)が参考になります。女性の性に関する調査報告書で、多くの女性の自慰の体験が詳しく書かれています。

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明るい性の診療室
大川玲子先生

大川玲子(おおかわ・れいこ)
千葉きぼーるクリニック婦人科医師
 1972年、千葉大学医学部卒業。同大助手、国立病院機構千葉医療センター(旧国立千葉病院)産婦人科医長などを経て、2013年から現職。日本性科学会理事長、NPO法人千葉性暴力被害支援センターちさと理事長。

今井伸(いまい・しん)
 聖隷浜松病院リプロダクションセンター長、総合性治療科部長
 1997年、島根医科大学(現・島根大学)卒業。島根大学助手、聖隷浜松病院泌尿器科主任医長などを経て、2019年4月から現職。日本性科学会幹事、日本性機能学会評議員、日本泌尿器科学会指導医、島根大学臨床教授。

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