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子どものおもらし…家庭で排尿の訓練

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 5歳を過ぎても昼間のおもらし(尿失禁)があると、学校生活などで苦労する。日本小児泌尿器科学会は今月、診療手引を作成した。家庭でできるトレーニングで改善するケースもある。(影本菜穂子)

 強い尿意が急に

 排尿は脳からの指令でコントロールされている。尿がたまって 膀胱ぼうこう が膨らむと、脳にその情報が伝わる。脳は勝手に排尿をしないよう、無意識のうちに「我慢して」と指令を出し、膀胱が縮まったり、尿道が緩んだりすることを抑える。トイレに入って準備が整うと指令は解除される。

 おもらしは、このような脳の働きが未成熟なことが主因となって起きる。個人差が大きいが、膀胱の機能を調節する神経が発達し、膀胱の容量も大きくなるに伴い、一般的には5歳頃にはなくなる。ただ広島大などのチームが小学生約7000人に行った調査で、全体の約6%に月1回以上、昼間のおもらしがあった。

 抑えがたい強い尿意が急に起こるため、トイレに駆け込んだり、脚を交差させてモジモジしたりするのが典型的なサイン。同時におねしょ(夜尿症)や便秘があるケースも多い。下着が少し湿る程度で、保護者が気づかないこともある。

 学会が手引作成

 適切な治療が行われていないことも多いため、日本小児泌尿器科学会は、診療手引と、保護者向けの解説を作成し、学会のウェブサイトに公開した。生活習慣の見直しを中心とした「行動療法」の重要性を強調し、保護者向けには家庭でできるトレーニングを分かりやすく紹介する。

 家庭では、尿意がなくても約2時間おきにトイレに行く。繰り返すことで、膀胱に尿が少したまったことを感じ取れるようになる。時間をかけ、おしっこを「出し切った」ことを意識させることも大切。強い尿意が消えると尿が残っていてもやめる子がいるためだ。

 また、膀胱にためられる尿量を増やすため、夕方までに1日500ミリ・リットル以上の水分を取る。さらに便秘の解消も重要という。

 栃木県内の小学2年生の女児(7)は、入学を半年後に控えた2017年秋、母親(42)とともに、自治医科大病院(同県下野市)を訪れた。毎日数回のおもらしがあった。検査で異常はなく、医師から「まだ十分に尿がためられていない」と説明された。

 膀胱が縮まるのを抑える薬を飲み、水分摂取や時間を決めた排尿の促しなどにも取り組み始めた。入学後は、尿漏れ用のパッドを着けて登校。担任教諭には授業が終わるごとにトイレに行くように呼びかけてもらった。それでも当初、週2回は保健室で着替えが必要だったが、おもらしは次第に減り、今は月2~3回程度になった。母親は「具体的なアドバイスをもらえて助かった」と話す。

 おもらしは、神経や尿道の病気、発達障害、精神的ストレスなどが関係していることもある。小学校に入学しても続く場合は、医療機関に相談した方がいい。学会のサイトでは、小児泌尿器科を専門にする医師を紹介している。

 自治医科大教授(小児泌尿器科)の中井 秀郎ひでお さんは「『放っておけば大丈夫』という楽観論や厳しいしつけでは治らない。各家庭で適切に対処してほしい」と呼びかけている。

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