40代から備えよう「老後のお金」 楢戸ひかる
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[番外編]がんになっても妊娠・出産をあきらめないで…AYA世代の治療を支えるお金の話
いつもは中高年のお金の話をテーマにしている当コラムですが、今回は番外編として、より若い世代が直面している経済的な問題についてお話ししたいと思います。若い世代ががん治療と向き合うとき、切実な問題となってくるのが、「 妊孕 性温存」。つまり、将来、子どもを持てる可能性をどう残すかです。しかし、妊孕性温存のための治療は、公的医療保険が適用されず、自費診療となることが多く、AYA世代(15歳から39歳前後)の患者には、大きな負担となっているのが実情です。こうした患者を支えるには、何が必要なのでしょうか。
がん治療と妊娠を両立するには
子宮 頸 がんは子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマウイルスへの持続的な感染が原因といわれています。このウイルスは性体験がある女性の過半数が感染経験を持つ一般的なもので、そのうちのごく一部のケースでがんを発症します。近年、20~30代の若年層に子宮頸がんが増えているといいます。
子宮頸がんに限らず、若いがん患者にとって重要な問題の一つが、放射線治療や薬物治療が生殖能力に与える影響です。自らもがんサバイバーで、家計や就労などの面から患者を支援しているファイナンシャル・プランナーの黒田尚子さんは、「これから『妊娠したい』『子どもを持ちたい』という人に知っておいてほしいのは、 『がんになっても、妊孕性(妊娠できる力)は温存できる可能性がある』 ということです」と言います。
若年性乳がんの諸問題に取り組んでいる「若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring」が2017年、がん研究振興財団の研究助成を受けて行ったアンケートによると、がん治療前に妊孕性温存について医療者と話し合いを持った患者は5割程度。医師などから、妊孕性温存に関する情報提供がなかった患者のうち、55.9%の患者が、「事前に情報が欲しかった」と回答しています。
専門医は、「治療」以外の部分に目が行かないこともあります。例えば、卵巣がん患者が多いのは妊娠・ 分娩 に最適な年齢を過ぎた60代ですが、なかには若い患者もいます。担当医に妊孕性温存への知識が十分でなければ、若い卵巣がん患者に対して配慮すべき視点が抜けてしまうということは、実際に起こり得ます。「医師側の配慮が求められるのはもちろんですが、患者自身が知識を持ち、医療者に確認することも必要です」(黒田さん)
現在、将来の妊娠を考える女性がん患者への妊孕性温存の方法には、下記の表のものがあり、いずれも、保険適応外で、自費診療として行われているのが現状です。
●妊孕性温存にかかる費用の目安
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