文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

なが~く、楽しくお酒と付き合うために 重盛憲司

医療・健康・介護のコラム

大きな仕事の後の打ち上げ、トラブルにつながる病的酩酊の危険も!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

普通の酔いと危険な酔いがある

 酔いの状態は3種類に分類されています。飲むほどに進む通常の酔いを「単純酩酊」と言います。アルコールが脳の理性をコントロールする部分(大脳新皮質)の働きを抑え、その結果、感情や本能を司る大脳辺縁系の働きが解放されている状態を指し、一般的にはほろ酔いと言われる状態です。陽気になる人が多いですが、感情のコントロールが利かなくなっているので、泣き上戸になったり、怒り上戸になったりします。

 単純酩酊に対して、「複雑酩酊」では、アルコールに刺激されて興奮状態になり、言っていることが支離滅裂になったり、粗暴な言動が増えたりします。また、暴力をふるう人もいますし、ブラックアウト(部分的な記憶の欠落)なども見られるようになります。衝動的な犯罪や自殺につながることもあります。断片的でも記憶は残っているので、限定的に刑事責任能力が認められます。精神鑑定を受けた男性のケースはこれです。

 もう一つ、「病的酩酊」は、飲酒量とは必ずしも相関せず、急に暴力行為や異常な行動が現れます。意識障害を伴うため、酩酊状態にあった間の記憶は完全に欠落しています。夢の中にいるような状態で、周囲の状況判断ができなくなっているので、事故や事件につながることが多く、危険な状態です。この場合、刑事責任は原則的に問われません。

 複雑酩酊や病的酩酊になる要因としては、飲みすぎのほか、脳の傷などの器質的問題や極度の疲労などが挙げられます。特に、飲酒量の増加と相関しない病的酩酊は、強い精神的・肉体的なストレスによる疲労が引き金になることがあります。

 激しいスポーツの試合後や、大きな仕事が片付いた直後など、打ち上げと称して飲み会が開かれることがありますが、そのような時には疲労が蓄積していることも忘れないでください。解放感から、ついついお酒が進んでしまいがちですが、「後悔先に立たず」です。(重盛憲司 精神科医)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

shigemori_prof

重盛憲司(しげもり・けんじ)

心療内科・精神科医 1952年、長野県生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、慶応義塾大学医学部精神・神経科学教室を経て、国立療養所久里浜病院(現・国立病院機構久里浜医療センター)にてアルコール依存症などの治療に携わる。また、厚生省(当時)でアルコール関連問題対策を担当。一方、自身では長年にわたり様々なお酒を愛飲。クラフトビールやシングルモルトウイスキーが近年のマイブーム。趣味は学生時代から続けるアイスホッケーと、自宅近くのマリーナからヨットで海に出ること。現在は洗足メンタルクリニック院長。テレビ番組の出演多数。

なが~く、楽しくお酒と付き合うために 重盛憲司の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事