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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

コラム

中年リストラ、50社就活失敗、引きこもり…家族の厳しい視線が追い打ち

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大手電機メーカーをリストラ。再就職できず、妻といさかい

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 もう一人、44歳の男性の事例です。大学卒業後に大手電機メーカーで勤務していましたが、大規模なリストラがありました。彼が所属するA機器部門のみが、同業の2社と合併し、B社となりました。勤務していましたが、3年後に業績が悪化し、会社は希望退職を募ることになりました。40歳以上が対象で、彼も含まれていました。

 2回目のリストラです。拒否したのですが、会社には働く場所がないので、割増退職金をもらい退職しました。700万円以上あった年収額で、再就職できる企業はなく、結果的に200人規模の企業に就職しました。収入は450万円。ところが、2年後にこの会社が倒産。以後は、就職できる会社が見つかりません。

 そのため、家に引きこもることになったようです。収入が減ったので、妻との 喧嘩(けんか) が絶えないようで、離婚の可能性もあるケースです。生活費は割増退職金で、1-2年はしのげそうですが、妻はパート勤務に出ています。

2回のリストラ、企業倒産、「運がない」と語る

私 : 2回もリストラがあり、1回目は分社化で社を離れ、次に、その合弁企業が行きづまったのですね。再びリストラ対象に。厳しいですね。つらかったでしょう。

男性: その通りです。世の中は不条理です。運が悪い。落ち込みますね。妻ともうまくいってない。

私 : 200人規模の最後の企業も倒産とは。

男性: 真っ暗ですね。真っ暗闇で。運がない。

私 : 日常はどうしていますか。

男性: 以前は図書館に行っていましたが、今は寝室に引きこもっています。

 気力が出ないし、誰にも会いたくない、話もしたくないから。

私 : 奥様は、どう考えていますか?

男性: 最初は優しかったのですが、1年も仕事が見つからないと、イライラして、不機嫌ですね。離婚もあるかも。

私 : イライラしているんですね

妻は「恥ずかしいから、外出しないで」と言う

男性: 妻が「あなた、外に出ないでね。恥ずかしいから。失業がわかるのが」と言いますから、引きこもっています。「恥ずかしい」の言葉が (こた) えました。つらい。

私 : 奥様の 見栄(みえ) ですか。女性は残酷なのか。「社会の目」が怖いのでしょうかね。

男性: 妻の見栄ですね。夫が失業中と知られたくないからでしょうね。

私 : う~ん。

男性: 本を読んでいます。どうして2回もリストラされ、倒産したかを知りたい。不条理だらけで……涙が。悔しくって、涙がでてきます。つらい。悔しい。

私 : つらいですね。でもね、いまは、心の安定が大事ですよ。軽い薬を使います。イライラも減ります。そうすれば心にエネルギーがたまりますよ。しだいに気力が出て、落ち込みが減ります。そうなれば、今後、どうすれば良いかの見通しが立てられますよ。じっくり時間をかけて、いきましょう。

 10-20歳代から始まる引きこもりと中年者の引きこもりは、かなり違います。今回の例のように40歳前後までは企業などで働いていた人だから、引きこもりのきっかけは社会的要因の関与が大きいです。そうなると、精神科医の手に余りますが、一番つらい本人の気持ちを楽にして、元気になってもらうお手伝いができないかと思っています。

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)
 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会前理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。ブログ「ストレス点数の夏目」はこちら

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2件 のコメント

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AIとITによる人と企業の寿命の転換期で

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

生きるって難しいことだらけですね。 精神症状や精神に起因する身体症状の何割かが価値観の問題や社会的な問題であるとわかります。 目先の勝敗が必ずし...

生きるって難しいことだらけですね。
精神症状や精神に起因する身体症状の何割かが価値観の問題や社会的な問題であるとわかります。

目先の勝敗が必ずしも最終的な結果に結びつくわけでないことは、項羽と劉邦の関係が教えてくれますが、そんなに強い意思と遠い視座を持ち続けること自体が多くの人間に非現実的です。

運不運で片づけられることは、実は若い頃の勉強不足の結果の場合もありますが、普通の人は自分の日常と専門の勉強と仕事で手いっぱいです。
その事の切り替えの問題は本当に難しいですね。
そこに、近親者が、その人の価値観や感情を押し付けてくると、立てるものも立てなくなる場合があります。
自分は適齢期に焦って結婚しなくて結果的に良かったです。
経済負荷や相手やその家族の価値観や感情に縛られることはマイナスも多いです。
(裏返しで少子化対策の要素。)

実際、AIとITによる社会の変化は多くの個人の再学習のレベルを超えてますので政治的課題ともいえます。
もしも、そういう対処しなければ、いずれ、治安の極度な悪化とかそういうレベルに行く日も来るのかもしれません。
そうやって考えると、こういう記事に興味や関心を持つことは偽善ではなく、学ぶべき現実でもあるとわかります。

あるいは、ある人をリストラした企業が先に企業寿命を終えるパターンあるでしょう。

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働かざるもの食うべからず

らふ

働こうという意識がない人や、以前の仕事にこだわったり、自意識過剰な人に多いですよ。働こう、食って行かなくちゃと思ったら謙虚な気持ちでなんにでも飛...

働こうという意識がない人や、以前の仕事にこだわったり、自意識過剰な人に多いですよ。働こう、食って行かなくちゃと思ったら謙虚な気持ちでなんにでも飛び込んで行かないと仕事になんてつけませんよ。自分で働いて自分で食う。これが出来ない人に仕事に就く条件など言う資格なんてないんです。就活にも工夫が必要。掃除の仕事なんて人が足りなくて引く手あまた。とりあえず自分が入れそうなところで賃金を手にすることを覚えることです。親がいつ居なくなっても自分が生きていく力をつけないといけませんね。

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