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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

コラム

不眠から抜け出したいなら「夜更かし」しよう!

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 こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。

 前回は不眠症が慢性化するメカニズムについてご説明しました。いったん長引いた不眠はなかなか治りにくいため、多くの患者さんは、少しでも長く眠りたいという焦りから、不眠をむしろ悪化させる「早寝、長寝、昼寝」などの誤った睡眠習慣に陥ってしまいます。これらの睡眠習慣を修正することが、慢性不眠症の苦しみから脱却する一番の近道です。

最大の悪玉は「悶々時間」

 不眠症の診療をしていると、とても不思議に感じることがあります。腰痛や膝痛がある人は痛みが (ひど) くならないような姿勢をとるし、高所恐怖症の人は高いところに近づこうとしません。しかし、不眠症の人は、「一日の中で一番苦しいのは、寝床で眠れずに過ごしている時間だ」と皆さん答えるにもかかわらず、長時間にわたって寝床にしがみつくようになります。ナゼ、そのような苦しい場所で、長時間を過ごそうとするのでしょうか?

 理由を伺うと、「少しでも長く寝床で横になっていれば、その分だけ長く眠れるのではないか」という期待をお持ちのようです。でも、残念ながらその期待は全く的外れです。長時間寝床で横になっている時に最も長くなるのは、「眠れずに 悶々(もんもん) としている時間」なのです。そして、長年の研究から、その悶々とした時間こそが慢性不眠症を悪化させる最大の悪玉であることが明らかになっています。

 眠りに悩む人にしばしば見られる「早寝、長寝、昼寝」は、不眠を悪化させる代表的な誤った寝方です。20時頃など非常に早い時刻から寝床に入る(早寝)、結果的に朝まで9時間以上も寝床で横になっている(長寝)のは合理的ではありません。不眠に苦しむ方の多くは中高年です。実質的な睡眠時間は、健康な人でもせいぜい6時間前後。9時間以上も寝床にいたのでは、どのように治療をしても、2時間以上は寝床で悶々と過ごすことになります。

慢性不眠症は「寝室恐怖症」

 この悶々とした時間がなぜ慢性不眠を悪化させるのでしょうか。「悶々時間」をレモンや梅干しに例えると理解しやすいと思います。小さい頃から何度も酸っぱい思いをしているうちに、レモンや梅干しのことを考えただけで唾液が出るようになりますよね。いわゆる条件反射(条件付け)です。

 慢性不眠症の人でも全く同じことが起こっています。毎晩、寝床で苦しい時間を過ごすうちに、恐怖の場所である寝室に向かうだけで緊張から目が () えるようになります。「眠れるだろうか……」などと身構えることがないリビングのソファではリラックスしてうたた寝ができても、いざ寝室に入ると眠気が消え去ってしまうのです。このように慢性不眠症には「寝室不眠症」「寝室恐怖症」という側面が強いのです。逆に、日中には電車の中やソファなどで(三つ目の損な寝方である)長めの昼寝や居眠りをしてしまい、その日の晩の眠気を損なってしまいます。

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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