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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

「人生終わったと思った」。でも、「ちゃんと生きている」 クローン病患者35人の語り公開

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「受験のストレスと片づけられた」「精神的な胃痛と言われた」

 「中学2年の頃から下痢が始まって、高校3年の頃には通学電車のトイレに毎日入らなければならないような状態になった。いくつものクリニックに行ったが、いつも受験のストレスで片づけられてしまった」

 「近所のクリニックでは、ただの精神的な胃痛だと言われ、もう動けなくなるくらいまで、大きな病院には行かせてくれず、やっと大きな病院に行ってクローン病の診断が出た」

 「大学院に行き、入りたい会社に入り、結婚を考えていた人生の絶頂期に難病と診断されて、人生終わったと思った。しかし、それからちゃんと20年生きている」

 これらは、難病のクローン病の患者が、診断までの経緯や病名を告げられた時の思いを語った言葉だ。

小腸、大腸に炎症が起きる難病 10代から20代に発症多く

 まとめたのは、認定NPO法人「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」(東京)。様々な病気の患者の語りを集めてデータベース化し、公表することで、患者が病気と向き合う勇気と知恵を身に付け、「患者主体の医療」を実現しようという活動に取り組んでいる。「クローン病の語り」はその第7弾として6月、ウェブサイトで公開された。

 クローン病は、主に小腸や大腸に炎症が起こる炎症性腸疾患のひとつ。原因不明で治りにくい慢性の病気で、国の難病に指定されている。患者数は全国に4万人以上とみられる。

 10歳代から20歳代に発症する人が多く、病気の治療はもちろんのこと、学校や就職、恋愛や結婚、出産と、人生を送る上での悩みは大きい。

 ちなみに、クローンはこの病気を報告した医師の名前。クローン羊などのクローン(複製)の意味とは全く関係ない。実は、誤解を招きやすい病名の悩みは、今回の患者の声の中にも複数あった。

24歳から59歳までの映像や音声

シンポジウムでクローン病の語り完成を発表する花岡隆夫さん

シンポジウムで「クローン病の語り」完成を報告する花岡隆夫さん

 「クローン病の語り」を中心になってまとめた同法人理事の花岡隆夫さんは、同じ炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎を2000年に発症。患者会の活動などを通じ、ディペックス・ジャパンを知り、活動に加わった。炎症性腸疾患の患者会「IBDネットワーク」でかつて、潰瘍性大腸炎患者の語りを作成した経験がある。

 7月13日に都内で開かれたディペックス・ジャパンの公開シンポジウムで壇上に立った花岡さんは、「病気の悩みについて、家族にすら話をしづらい。むしろ家族だからこそ言いにくいこともある。(病気の)自分の子ども達がどんな風に感じているのか、パートナーがどういう苦しい思いをしているのか、そんなことを理解する一助になればいいなという思いで、このプロジェクトを始めた」と語った。

 今回のクローン病の語りでは、24歳から59歳まで35人の患者に話を聞いた。1人当たり約1時間から1時間半、映像と音声を記録。氏名は出さないものの、多くの人が顔を出して、語る様子の映像を公開している。映像と音声、語りを文章に起こしたテキストで触れることができる。

19項目、約300の「語り」

 ディペックスの語りのデータベースの特色は、個々が語った内容を分析し、診断や治療といった項目ごとに分類、編集されている点だ。

 クローン病は若くして発症する病気のため、就学や就労、恋愛や結婚の悩みも大きい。そこで、<発見>や<治療>に加え、<日常生活への影響><人間関係への影響><病気と向き合う>の五つに大きく分類した。

 そのうえで、たとえば<日常生活への影響>の項目としては「学校生活」「就職活動における病気の開示・非開示」「病を持ちながら働くこと」「経済的負担と公的支援」の項目を設け、<人間関係への影響>では、「恋愛・友人関係」「家族との関係」「同病者とのつながり」「医療者とのかかわり」の項目に分類して示した。

 一つの項目ごとに、1人3分程度、十数人ほどの患者の語りで構成。全部で計19項目、約300の「語り」がまとめられている。全部を聴くと十数時間にも及ぶが、ウェブサイトを訪れた人は、関心のある項目から選ぶこともできるし、年代や性別など患者の人物背景から選ぶこともできる。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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1件 のコメント

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人は自分の持つ異常性と異常のタグに悩む

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

こういう枠組みを知ると、どれだけ多くの人間が未熟で、扱う医者も医療制度も未熟かとよくわかります。 自分の知らない事、今の科学の届かない所、科学が...

こういう枠組みを知ると、どれだけ多くの人間が未熟で、扱う医者も医療制度も未熟かとよくわかります。
自分の知らない事、今の科学の届かない所、科学が届いても周辺の理解などの社会的問題がむつかしいところ、その中で、結局は弱い者いじめに向かう人間の弱さ。

心療内科や精神科のコラムでもありますが、自分の失敗や欠点を認められない人間の弱さほど強く見えるものはありません。
それは要するに責任問題を逃れたり、権威づけをする擬態や威嚇行為だからです。

それでも、権力を失えば、彼らの価値は激減するので、生存をかけた戦いとしては当然なのかもしれないですけどね。
障害者の認定でも、そういう部分があります。
カットオフと救済措置などをめぐって綱の引き合いがあります。

身体や精神の明らかな異常として検出される前にある見えざる病、それを無かったことにするのは医師のモラルとしては反則のはずで、なんとかの誓いとか医学生に授業で教え要求しておいて、そんなものです。
弁護士や裁判官も、たまにすごい意見や判決を平気で出しますね。
それも、立場上仕方ない事でしょう。

別に、それぞれ立場が違うだけで、単純な非難は意味がありません。
それでも、先進国は途上国に比べ、まだましだと思います。
悩みや立場を共有するシステムがあって、それに対する一定の理解や譲歩が権力側にも存在します。
それは、結局、全ての人間やその家族が病気やその手前にあるからという単純な理屈からではないかと思います。

同じ病気の同じ症状でも、本人や周囲の理解と社会的状況により、まるきり幸福度は変わるのではないでしょうか?
いずれにせよ、最終的には本人の理解や振る舞いの学びと共に、声にできない本音をどこかで共有することがまだましな人生を一つでも増やすことになるのかもしれないですね。
家族や社会に恵まれる人ばかりでもないですし、人間や社会の歪みは正すものではなく、付き合い方を考える方が多くの人間にとって現実的です。

異常のない人間の方が異常という当たり前の事実を受け容れられるほど強い人間ばかりでもないので、嘘や擬態も自分の中の真面目さや正直さを守るために大事です。

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