心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
常に強いまぶしさを感じる…目の異常では説明できない
「まぶしさ」とは何でしょうか。
同じ明るさの環境の中にいても、明るすぎると感じる人と、そう感じない人がいます。それはちょうど、エアコンで温度設定した同じ部屋にいても、肌寒いと思う人、快適と思う人、もっと冷やしてほしいという人がいるのと、よく似ていると思うかもしれません。
まぶしいという感覚は、気温の高低と同じく、明暗の程度と比例関係にありそうに思いがちですが、実はその環境の明るさの程度と必ずしも比例しない感覚のようなのです。
真っ暗な部屋の中に、小さな豆電球や電子機器の識別灯などがついているだけで、まぶしいと感じる人もいます。部屋で普通に日常行動ができる人でも、テレビやパソコン画面が不意につくと、まぶしいと感じて顔を背ける人もいます。これは、常識的にいうまぶしさとは異なり、光に対する恐怖や、光を避けたいと感じる(私は「 嫌光感 」と称しています)、脳を介した回避反射です。
このような高度の 羞明 (まぶしさ)は、眼球の病気ではまず起こりません。ドライアイ、白内障、網膜の病気などで生じるまぶしさは、常時ではなく、生活環境の中で何かの条件がそろった時に一時的に感じるものであり、その状態や影響が長く残ることはほとんどありません。
一方、脳で生じた光過敏性は、まぶしい、避けたいと感じているのに、無理に見続けてまぶしさを避けずにいると、気分が悪くなり、ふらつきや 倦怠 感、さらには眼痛、頭痛、 嘔吐 などが生じる場合もあります。ひどい場合にはそのまま倒れてしまうことさえあります。
このような状況を繰り返すとだんだん慣れてくるのかというと、大抵はそうではなく、むしろ次第に感覚過敏が増強し、身体症状は拡大、悪化し、復活が難しくなるのです。
私たちの外来で、このような高度の羞明を持つ症例で最も多く出合うのは 眼瞼 けいれん(症状が眼瞼にとどまらないメージュ症候群を含む)の患者です。本症の90%前後の患者は羞明を訴え、その半数以上は眠っている時以外は常時感じています。つまり眼球の病気ではない眼瞼けいれんの中核症状が羞明だということになります。
眼瞼けいれんは慢性疾患で、こうすれば治るという根治療法はありません。症状を軽減させることを目的とした対症療法が中心です。
高度な羞明に対しても特効薬はなく、遮光レンズやサングラスのお世話にならなければなりません。もちろん、それで羞明の症状が完全に取り除かれるわけではありませんが、そうした色付きの眼鏡なしに日常生活することはほとんど不可能です。
逆に、そうした眼鏡を使えれば、日常生活は何とかでき、仕事もし続けられる例もあります。ところが、日本の社会では、理由があっても、色付き眼鏡はなかなか受け入れられません。
次回は、そのあたりをもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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