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リングドクター・富家孝の「死を想え」

医療・健康・介護のコラム

高島忠夫さんの在宅死、家族と地域の支えなくして「願い」はかなわない

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 先日、高島忠夫さんが88歳で亡くなりました。老衰による在宅死でした。長男の高嶋政宏さんによると、亡くなる1か月前から家族は覚悟を決めていて、最期は家族に見守られて眠るように息を引き取ったといいますから、理想的な「在宅死」だったと言えるでしょう。

 晩年の高島さんは、うつ病になり、その後、パーキンソン病も発症。いったん復帰するも、2010年には不整脈から心臓にペースメーカーを取り付ける手術を受けていました。

 この闘病生活を献身的に支えたのが妻の寿美花代さん。入退院を繰り返すなか、寿美さんが自宅で介護をすることを決意、家族も協力して、在宅医とヘルパーを頼み、24時間体制で見守ってきたといいます。報道によると、在宅医は週1回訪問診療、ヘルパーは1週間3交代で来宅してもらっていたようです。

在宅死ができるのは4人に1人

子育てについて語る俳優の高島忠夫さん。東京・新宿の文化放送スタジオで(1990年3月15日撮影)

 人はみな住み慣れた家で愛する家族に 看取(みと) られ、穏やかに死んで行きたいと願います。まさに、高島さんはそうされたわけですが、これは、誰にでもできることではありません。じつは、現在の在宅死の状況は、理想とはかけ離れているのです。まず、在宅死ができるのは、4人に1人です。しかも、厚労省は統計上、老人ホームなどでの死も在宅死としているのです。

 現在、在宅死は「国策」です。団塊の世代が75歳以上になる2025年が近づき、少しでも医療費を減らさないと、国家財政がもたないからです。病院のベッド数の削減を打ち出し「病院から家へ」の大号令のもとに、さまざまな取り組みが行われています。しかし、大号令に現実が追いついていません。

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。前新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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