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リングドクター・富家孝の「死を想え」

コラム

高島忠夫さんの在宅死、家族と地域の支えなくして「願い」はかなわない

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在宅医も看護師も、ヘルパーも足りない

 在宅死は、多くの場合、がんなどで病院に入院した高齢の患者さんを家族が引き取るところから始まります。ところが、家に戻ったものの在宅ケアの人手も、在宅医も看護師もヘルパーも、まったく足りていません。厚労省は、在宅シフトを実現させる仕組みとして、医療・介護・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」を提唱していますが、これができる自治体は少ないのです。国が本腰を入れてつくった「在宅療養支援診療所」の制度ができたのは2006年ですが、地方では財政難から診療所がないところもあります。

 私は医師紹介業も行っているので、「在宅医を紹介してほしい」という引き合いが数多く寄せられます。ところが、なり手はなかなかいません。なぜなら、在宅医として患者さんの看取りに責任を持つためには、24時間体制で勤務しなければならないからです。患者さん宅から「様子がおかしい」と連絡があれば、夜中でも駆けつけねばなりません。携帯は肌身離さずで、プライベートはありません。在宅患者さんの家族からの不満の第一は、「呼んでも先生が来てくれない」です。訪問看護師もまったく足りていません。看護師さんのなかで訪問看護に従事している人は2・8%にすぎません。

在宅には部屋の環境整備も必要

 患者さん家族は、在宅介護を決めたら、まず地域包括支援センターに相談に出向きます。それで、「すぐに準備します」と言われたのなら、恵まれたほうです。また、在宅看護のためには、介護用ベッドを手配し、家の中をバリアフリーにしたりしてケアできる態勢を整えなければなりません。段差がある部屋やトイレには、ポールを取り付けてもらい、足腰が弱った患者さんが少しでも快適に過ごせるようにしなければなりません。これで、はじめて在宅医、看護師を頼めます。

 そしていちばん大事なのが、家族の支えです。家には誰か1人必ず介護できる家族がいなければなりません。いま最大の問題は、老老介護です。寿美さんは87歳と高齢でしたが、ご子息やその家族の協力がありました。こんなことは書きたくありませんが、家族仲が悪く、在宅介護をしても () めてばかりいる家も多いのです。

 そこで、もし、あなたが最終的に自宅で死を迎えたいなら、日頃から、家族を大事にするように心がけることが肝要です。(富家孝 医師)

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富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている。

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